2015/03/27

同音書換6

ながい


●按分→案分
《漢語大詞典》には両方ともない。
大日本国語辞典》には「按分」「按分比例」のみ。
《大漢和辞典》も「按分」「按分比例」のみ。
「案分」の用例
新撰算術》(1903)「案分比例
軍人学生二十世紀算術》(1905)「案分比例
本邦産建築石材雜記》(1913)「尚ほ才石の大さを區別し其割合を案分すれば


●按排→案配
《漢語大詞典》
【安排】
 1.聽任自然的變化。
  《莊子・大宗師》:“造適不及笑,獻笑不及排,安排而去化,乃入於寥天一。
   郭象注:“安於推移而與化俱去,故乃入於寂寥而與天為一也。
  宋王安石《和微之登高齋》:“餘年無歡易感激,亦愧莊叟能安排
 2.謂施以心思人力。與純任自然、不加干預相對而言。
  宋周煇《清波雜志》卷九:“積從胡瑗學,一見異待之,嘗延食中堂,二女子侍立,將退,積問曰:‘門人或問見侍女否,何以答之?’瑗曰:‘莫安排。’積聞此言省悟,所學頓進。
  宋陸游《兀坐久散步野舍》詩:“先師有遺訓,萬事忌安排
  清錢謙益《病榻消寒雜詠》之二七:“由來造物忌安排,遮莫殘生事事乖。
 3.安置;妥善布置。
  唐李中《竹》詩:“閑約羽人同賞處,安排棋局就清涼。
  宋陳與義《春日》詩:“忽有好詩生眼底,安排句法已難尋。
  元無名氏《賺蒯通》第二摺:“安排着香餌把鱉魚釣,准備着窩弓將虎豹射。
  《醒世恒言・兩縣令競義婚孤女》:“高公安排兩乘花花細轎,笙簫鼓吹,迎接兩位新人。
  清李漁《意中緣・毒誆》:“且放懷,喜得同舟共濟,把巧計安排
  趙樹理《楊老太爺》:“吃過了飯,鐵蛋的媽給鐵蛋安排日程:‘今天夜裏淘一點麥子,明天前晌曬曬,後晌磨磨,後天蒸幾籠饅頭。’
 4.打算,准備。
  《元詩紀事》卷六引元王義山詩:“滿斟綠斝安排醉,牢裹烏紗照顧吹。
  清李漁《玉搔頭・奸圖》:“天子離鄉,安排坐御床。
  清龔自珍《己亥雜詩》之二一一:“安排寫集三千卷,料理看山五十年。
 5.猶整治。
  元楊景賢《西游記》第一本第一摺:“夫人,夜來我買得一尾金色鯉魚,欲要安排他,其魚忽然眨眼。
  《古今小說・新橋市韓五賣春情》:“教八老買兩個豬肚磨凈,把糯米、蓮、肉灌在裏面,安排爛熟。
  明周履靖《錦箋記・怨寡》:“如今專事兇殘,安排奴婢。
  《儒林外史》第四十回:“彼人一定是安排了我父親,再來和我歪纏。
【鹽梅】
 1.鹽和梅子。(以下略)
 2.調和;和諧。
  南朝梁劉勰《文心雕龍・聲律》:“聲得鹽梅,響滑榆槿。
  宋蘇轍《除馮京彰德軍節度使制》:“和而不同,性有鹽梅之德。
 3.鹽花梅漿。可用以擦洗銀器。(以下略)
 4.白梅的異名。見明李時珍《本草綱目・果一・梅》。

大日本国語辞典》では「安排」と「鹽梅」が統合されている。
《大漢和辞典》
【安排】アンバイ アンパイ
 1.物のあるがままに安んずる。
  〔莊子、大宗師〕造適不及笑、獻笑不及排、安排而去化、乃入於寥天一。
   〔注〕排者、推移之謂、云云、安於推移、而與化倶去、故乃入于寂寥、而與天爲一也。
 2.ほどよくすゑ幷べる。よい工合に處置する。程よく加減する。
  〔謝靈運、晩出西射堂詩〕安排徒空言、幽獨賴鳴琴。
  〔孟郊、石淙詩〕弱力謝剛健、蹇策貴安排
  〔白居易、諭友詩〕推此自豁豁、不必待安排
【按排】アンパイ
 程よく物事の順を定めならべる。適宜にかげんをする。鹽梅。安排の2に同じ。
【鹽梅】エンバイ アンバイ
 1.味をよい程に加減する。(以下略)
 2.うめぼし。(以下略)
 3.物事を程よく調和すること。又、其の加減。具合。

「按配」の用例
聖路易萬國博覽會に建設すべき日本特別舘に對する私見》(1903)「結搆按配
秋螢に就て》(1904)「按配は、生活上餘程大切なる事項と見へる。
慶応義塾出身名流列伝》(1909)「本店支店事務員の按配を行ふに際し
最新学校衛生学》(1910)「課業ノ按配
「案排」の用例
清酒中「サリチール」酸ト共存セル安息香酸ヲ分離檢出スル法》(1906)「案排工夫
先月來新聞雑誌に出でたる建築に關係ある事項一束》(1908)「各館の案排測量は勿論
先月來新聞雜誌に出でたる議院建築に關する事項》(1910)「各室の案排
光線と醫療》(1914)「照射量を適當に案排する
「案配」の用例
ボルボックスの趨光性(二)》(1904)「同じやうな案配に」
第七回萬國建築大會概況(四)》(1908)「狹少ならしむる樣に案配する」
白中黄記》(1914)「真面目を緩和する滑稽の案配
富士瓦斯紡績株式會社の動力につきて》(1915)「出來時期等を適當に案配し」

2015/03/26

同音書換5

諳記→暗記、諳算→暗算、諳誦→暗唱



●諳記→暗記
《漢語大詞典》
【諳記】
 熟記。
  《南史・臧燾傳》:“嚴於學多所諳記,尤精《漢書》,諷誦略皆上口。
  《新唐書・姚崇傳》:“三為宰相,常兼兵部,故屯戍斥候,士馬儲械,無不諳記
【暗記】
 1.默記。
  《後漢書・應奉傳》:“奉少聰明,自為兒童及長,凡所經履,莫不暗記
  明方孝孺《先府君行狀》:“五歲能讀書,自辯章句,年十餘,暗記五經,為文有奇語。
 2.秘密的記號。
  唐李商隱《無愁果有愁曲》:“白楊別屋鬼迷人,空留暗記如蠶紙。
【闇記】
 默讀熟記。
  唐韓愈《中大夫陝府左司馬李公墓志銘》:“年十四五,能闇記《論語》、《尚書》、《毛詩》、《左氏》、《文選》,凡百餘萬言。
  清錢謙益《次韻答王岕庵戶部》:“闇記輸王粲,清評服許將。

《大漢和辞典》
【諳記】アンキ
 そらでおぼえる。ちうおぼえ。暗記。
  〔後漢書、應奉傳〕自爲童兒及長、凡所經履、莫不暗記、讀書五行並下。
【暗記】アンキ
 そらでおぼえる。諳記。
  〔後漢書、應奉傳〕自爲童兒及長、凡所經履、莫不暗記、讀書五行並下。
「諳記」の項でも「暗記」の文を引用している。「闇記」はない。
「暗記」の用例
福澤文集》(1878)「其多少有無ヲ暗記セザル可ラズ
今世教育學(み氏)》(1895)「理解的暗記ノ機械的暗記ニ優ル所以
英語敎授法》(1897)「機械的ノ暗記暗誦ハ吳々モ無用
南總里見八犬傳》(1907)「作者暗記の失也。
《大増補漢語解大全》(1874)には「暗記 ソラオボヘ」「諳記 ソラデシルス」とある。《作文いろは字引大成》(1894)、《大日本国語辞典》(1915-1919)に「暗記」はあるが「諳記」はない。


●諳算→暗算
《漢語大詞典》
【暗算】
 1.私下計數。
  唐陸暢《望毛女峰》詩:“我種東峰千葉蓮,此峰毛女始求仙。今朝暗算當時事,已是人間七萬年。
  唐杜荀鶴《旅寓》詩:“暗算鄉程隔數州,欲歸無計淚空流。
 2.暗中圖謀傷害或陷害。
  《水滸傳》第七四回:“你省得麼?不許暗算

《大漢和辞典》
【諳算】アンザン
 むなざん。めのこざん。暗算。
【暗算】アンザン
 1.むなざん。算盤などを用ひないで心の中でかんぢやうする。暗數。
  〔杜荀鶴、旅寓詩〕暗算鄕程隔數州、欲歸無計淚空流。
 2.陰謀する。窃かに謀る。密かに害する。暗殺する。
  〔長生殿、陷闕〕終恐遭其暗算

「暗算」の用例
小學暗算必携》(1878)
授業法(和氏)》(1879)
尋常小学暗算書》(1887)
暗算かるたの問題》(1889)
《作文いろは字引大成》(1894)、《日本大辞林》(1894)、《帝国大辞典》(1896)、《日本新辞林》(1897)、《ことばの泉:日本大辞典》(1898)、《大辞典》(1912)、《大日本国語辞典》(1915-1919)、《大辞典》(1934-1936)に「暗算」はあるが「諳算」はない。《言泉》(1922)では「諳算」「暗算」が統合されている。


●諳誦→暗唱
《漢語大詞典》
【諳誦】
 1.記誦。
  晉葛洪《抱樸子・遐覽》:“雜道書卷卷有佳事,但當校其精粗,而擇所施行,不事盡諳誦,以妨日月而勞意思耳。
  章炳麟《秦獻記》:“諸侯《史記》與《禮》、《樂》諸經,多載行事法式,不便諳誦
【暗誦】
 1.默誦;背誦。
  《晉書・藝術傳・鳩摩羅什》:“羅什多所暗誦,無不究其義旨。
  宋沈括《夢溪筆談・技藝》:“凡大曆悉是筭數,令人就耳一讀,即能暗誦
  明歸有光《先妣事略》:“孺人中夜覺寢,促有光暗誦《孝經》。
【闇誦】
 1.熟讀成誦。
  《三國志・魏志・王粲傳》:“初,粲與人共行,讀道邊碑,人問曰:‘卿能闇誦乎?’曰:‘能。’因使背而誦之,不失一字。
  北魏楊衒之《洛陽伽藍記・崇真寺》:“貧道立身以來,唯好講經,實不闇誦
  《新唐書・劉迺傳》:“少警穎,闇誦六經,日數千言。
【暗唱】
 1.憑記憶唱名。
  《新唐書・崔善為傳》:“善為巧于曆數,仕隋,調文林郎。督工徒五百營仁壽宮,總監楊素索簿閱實,善為執板,暗唱無一差謬,素大驚。

《大漢和辞典》
【諳誦】アンシヨウ
 そらでよむ。又、そらよみ。ちうよみ。
  〔晉書、藝術、鳩摩羅什傳〕羅什多所諳誦、無不究其義旨。
【暗誦】アンシヨウ
 詩文などをそらおぼえでよむ。又、そらよみ。そらんじおぼえる。
  〔蜀志、楊洪傳、注〕祗悉已暗誦、答對解釋、無所疑滯。
  〔晉書、藝術、鳩摩羅什傳〕羅什多所暗誦、無不究其義旨。
  〔杜甫、可歎詩〕羣書萬卷常暗誦
【闇誦】アンシヨウ
 そらんじよむ。暗誦。
  〔魏志、王粲傳〕初粲與人共行、讀道邊碑、人問曰、卿能闇誦乎、曰能、因使背而誦之、不失一字。
【暗唱】アンシヤウ
 文字で記してあることをそらんじて述べいふこと。
  〔唐書、崔善爲傳〕善爲執板暗唱、無一差謬、素大驚。
「諳誦」と「暗誦」で同じ文を引用している。
GoogleBooksの用例
 《女学雜誌》第121号(1888)「然ば橫文を暗唱する」
 《聚楽式算術教授法》(1909)「加减乘除の規則は毎回反覆暗唱せしめ」
 《意志と現識としての世界》(1911)「グラチアンの處世原則三百題を暗唱しても」
 《山県元帥》(1925)「君は百人一首の歌を暗唱して」

2015/03/04

同音書換4

●白堊→白亜
《漢語大詞典》「白堊」
│ 1.白土,石灰巖的一種,白色,質軟而輕。工業上用途甚廣,是燒製石灰和水泥等的原料,橡膠製品和油漆等的填充物,亦可入藥。又名白善土,俗稱白土子。
│  《山海經‧中山經》:“蔥聾之山,其中多大谷,是多白堊,黑、青、黃堊。”
│  《呂氏春秋‧察微》:“六曰使治亂存亡若高山之與深谿,若白堊之與黑漆。”
「白堊」(ハクアク)が(ハクア)と読まれ「白亞」と書かれるようになったなどという話をよく聞く。
Googleブックス調べでは二宮峰男《馬来半島事情》(1898)に「白亞」とあるからこの頃にはハクアと読まれていたのだろう。
大日本国語辞典》(1915)に「白亞」はないものの「白堊」の読みは二通り。しかし「白堊紀」「白堊系」になるとハクアだけになる。
《大漢和辞典》でも「白堊」に「ハクア、ハクアク」とあるのに「白堊紀」「白堊館」「白堊系」には「ハクア」しかない。

●防遏→防圧
《漢語大詞典》「防遏」
│ 1.防備遏止。
│  《後漢書‧寇恂傳》:“吾今委公以河內,堅守轉運,給足軍糧,率厲士馬,防遏它兵,勿令北度而已。”
新聞協会典拠。あまり広まっていないのか《漢字源 改訂第五版》(2011)、《全訳漢辞海 第三版》(2011)とも「防遏」しか載っていない。
Googleブックス調べでは《獨逸民法草案理由書》(1888)、《支那彙報》(1894)などなど19世紀から「防壓」もある。
現在ではこの言葉自体あまり聞かないような気がする。

2015/02/01

「同音の漢字による書きかえ」3

●掩護→援護
「掩護」は戦闘行動の場合にしか使わないらしい。それ以外は「援護」。
古坂明詮《時局下に於ける軍事援護事業について》(1938)は軍の話題なので混乱しやすいけど、単純に助ける「援護」のほう。
大日本国語辞典》(1915)、《大日本国語辞典》(1941)には「掩護」しか載っていない。

●恩誼→恩義
《漢語大詞典》「恩誼」
│ 1.恩德情誼。
│  《醒世恒言‧李玉英獄中訟冤》:“此行一則感老爺昔日恩誼,二則見公子窮途孤弱,故護送前來。”
《漢語大詞典》「恩義」
│ 1.道義;恩情。
│  《淮南子‧人間訓》:“或有功而見疑,或有罪而益信,何也?則有功者離恩義,有罪者不敢失仁心也。”
「恩誼」はよしみ、いつくしみ。「恩義」は恩と義理。ということらしいがよくわからない。
そもそも「誼」の字が「義」から派生した字のようで区別する意味がないように感じる。
大日本国語辞典》(1915)では項目が統合されている。

2015/01/25

「同音の漢字による書きかえ」2

●衣裳→衣装
《漢語大詞典》「衣裳」
│ 1.古時衣指上衣,裳指下裙。後亦泛指衣服。
│   《詩‧齊風‧東方未明》:“東方未明,顛倒衣裳。”
│ 2.《易‧繫辭下》:“黃帝、堯、舜垂衣裳而天下治,蓋取諸乾坤。”後因以借指聖賢的君主。
│ 3.代稱達官貴人或儒雅之士。
│   《後漢書‧崔駰傳》:“方斯之際,處士山積,學者川流,衣裳被宇,冠蓋雲浮。”
│ 4.借指中國。
│   《後漢書‧楊終傳》:“故孝元棄珠崖之郡,光武絕西域之國,不以介鱗易我衣裳。”
《漢語大詞典》「衣裝」
│ 1.衣服及行囊。
│   《列子‧說符》:“﹝牛缺﹞遇盜於耦沙之中,盡取其衣裝車,牛步而去。”
│ 2.衣着,裝束。
│   《後漢書‧董卓傳》:“長安中士女賣其珠玉衣裝市酒肉相慶者,填滿街肆。”
もと「衣」は上に着るもの、「裳」は下に履くもので、「衣裳」はその上下合わせたものである。
「衣裝」は身支度全般を指すが、特に衣服だけにも用いる。
大日本国語辞典》(1915)でも「衣裳」と「衣裝」は項目が統合されている。


●陰翳→陰影
《漢語大詞典》「陰翳」
│§Ⅰ
│ 1.陰霾,陰雲。
│   明方孝孺《東河驛值雪次茅長史白戰體韻》:“明朝陰翳盡掃除,天際諸峰翠相並。”
│ 2.指樹木枝葉繁茂成陰。
│   宋陳亮《重建紫霄觀記》:“方山川未通,居民未多,林木陰翳,禽獸麋鹿出沒於其間之時,其靜深當不止今日。”
│ 3.指樹陰。
│   柔石《二月》:“新綠的樹葉底陰翳,鋪在淺草地上。”
│§Ⅱ
│  1.遮蔽。
│   唐陳子昂《感遇》詩之三二:“陽彩皆陰翳,親友盡暌違。”
《漢語大詞典》「陰影」
│ 1.陰暗的影子。
│   唐元稹《遣春》詩之三:“岸柳好陰影,風裾遺垢氛。”
「陰翳」はくもってかげる、おおわれてかげることで、「陰影」はかげ。
大日本国語辞典》(1915)には「陰影」しか載っていない。


●穎才→英才
《漢語大詞典》「才穎」 (「穎才」は載っていない)
│ 1.才能出眾。
│   《晉書‧潘岳傳》:“岳少以才穎見稱,鄉邑號為奇童,謂終賈之儔也。”
《漢語大詞典》「睿才」
│ 1.聰慧超群的才能。
│   唐《奉和聖制從蓬萊向興慶閣道中留春雨中春望之作應制》:“已知聖澤深無限,更喜年芳入睿才。”
《漢語大詞典》「叡才」
│ 1.聰慧超人的才能。
│   《三國志‧魏志‧管輅傳》“舉坐驚喜”裴松之注引《管輅別傳》:“持卿叡才,游於雲漢之間,不憂不富貴也。”
《漢語大詞典》「英才」
│ 1.傑出的才智。
│   漢孔融《薦禰衡疏》:“淑質貞亮,英才卓礫。”
│ 2.指才智傑出的人。
│   《孟子‧盡心上》:“得天下英才而教育之,三樂也。”
いずれも優れた才能を指す。
大日本国語辞典》(1915)には「英才」しか載っていない。

2014/11/24

「同音の漢字による書きかえ」の検証

●暗誦→暗唱
《漢語大詞典》「暗唱」
>憑記憶唱名。
> 《新唐書‧崔善為傳》:“善為巧于曆數,仕隋,調文林郎。督工徒五百營仁壽宮,總監楊素索簿閱實,善為執板,暗唱無一差謬,素大驚。”
女学雜誌》第121号(1888)
>然ば橫文を暗唱する
広田虎之助《聚楽式算術教授法》(1909)
>加减乘除の規則は毎回反覆暗唱せしめ、
姉崎正治《意志と現識としての世界》(1911)
>グラチアンの處世原則三百題を暗唱しても、
杉山其日庵《山県元帥》(1925)
>君は百人一首の歌を暗唱して

●闇夜→暗夜
《漢語大詞典》「暗夜」
>1.黑夜。
> 《呂氏春秋‧精諭》:“桓公雖不言,若暗夜而燎燭也。”
> 《宋書‧謝景仁傳》:“及毅兵敗眾散,時已暗夜。”
>2.喻黑暗的社會。
> 曹靖華《飛花集‧竊火者》:“魯迅先生正是要借俄國文學的火,來照中國的暗夜的。”
>3.蟲名。
> 宋朱翌《猗覺寮雜記》卷下:“嶺外人家嬰兒衣,暮則急收,不可露夜。土人云,有蟲名暗夜,見小兒衣,必飛毛著其上,兒必病寒熱,久則瘦,不可療。其形如大蝴蝶。”

●意嚮→意向
《漢語大詞典》「意向」
>1.亦作“意嚮”。
>2.志向。
> 南朝宋劉義慶《世說新語‧品藻》:“郗司空家有傖奴,知及文章……劉問何如方回。 王曰:‘此正小人有意向耳,何得便比方回。’”
> 宋曾鞏《答李沿書》:“辱示書及所為文,意向甚大。”
> 明唐順之《寄黎知州書》:“僕閒居自咎,惜從前意向之未真,覺一切妄念之為累。”
>3.心之所向,意圖。
> 《南齊書‧庾杲之傳》:“昔袁公作衛軍,欲用我為長史,雖不獲就,要是意向如此。”
> 《醒世恒言‧薛錄事魚服證仙》:“自此三江五湖,隨其意向,無不游適。”
> 中國近代史資料叢刊《辛亥革命‧武昌起義清方檔案》:“三軍之耳目心思視一將之意向為轉移。”

2014/09/26

wikipediaの「同音の漢字による書きかえ」の記述の検証

Wikipedia「同音の漢字による書きかえ #改定常用漢字表の影響
>以上のうち、戦後から用いられるようになった代用表記は、「憶説」「憶測」「広範」の3語である。「破毀」と「破棄」、「哺育」と「保育」はそれぞれ別語である。残りの8語はもともといずれも用いられていたもので、新しく作られた表記ではない[要出典]。


この項目にある表記が戦前からあるかどうか調べた。





●臆説→憶説
ciniiで「憶説」と検索したら、近野英吉《竹の開花に關する憶説に就て》(1934/07/10)という論文がでてきた。
140926_1.jpg
従来の説は憶説にすぎないというようなことを本文で述べていて、その本文でも「臆説」ではなく「憶説」を用いている。
●臆測→憶測
ciniiで「憶測」と検索したら、岡本哲史《切り缺きが翼の空氣力學的特性に及ぼす影響に關する實驗研究》(1934/10)という論文がでてきた。
140926_2.jpg
●潰滅→壊滅
《漢語大詞典》に両方とも載っている。
>潰滅
> 崩潰滅亡。
>  魯迅《<二心集>序言》:“只是原先是憎惡這熟識的本階級,毫不可惜它的潰滅。”
>壞滅
> 毀滅;磨滅。
>  唐王昌齡《諸官游招隱寺》詩:“金色身壞滅,真如性無主。”
「壊滅」のほうが古い語のようだ。《大日本国語辞典》には「壞滅」しか載っていない。
●潰乱→壊乱
《漢語大詞典》に両方とも載っている。
>潰乱
> 散亂;昏亂。
>  《後漢書‧馮衍傳上》:“今海內潰亂,人懷漢德。”
>壞亂
> 1.敗壞;混亂。
>  《禮記‧學記》:“雜施而不孫,則壞亂而不脩。”
> 2.猶言變亂。
>  晉袁宏《後漢紀‧光武帝紀三》:“今長安壞亂,赤眉在郊,王侯搆難,大臣分離。”
>壞亂
> 破壞,毀亂。
>  《漢書‧外戚傳下‧中山衛姬》:“壞亂法度,居非其制,稱非其號。”
大日本国語辞典》にも両方載っている。
>潰乱
> 軍敗れ、隊伍をみだして逃げ走ること。
>壞亂
> やぶれみだるること。やぶりみだすこと。
意味がちょっと違う。「潰乱」は人の集団が乱れる感じで、「壊乱」は秩序が乱れる感じで使い分けられるのだとおもう。
●肝腎→肝心
《漢語大詞典》に両方とも載っている。
>肝腎
> 猶心思。
>  唐韓愈《贈崔立之評事》詩:“勸君韜養待徵招,不用雕琢愁肝腎。”
>肝心
> 比喻人的內心。
>  漢王充《論衡‧超奇》:“書疏文義,奪於肝心。”
大日本国語辞典》にも両方載っている。
>肝腎
> 1.肝臟と腎臟と。こころ。
> 2.かんえう(肝要)に同じ。
>肝心
> 〔肝と心とは人身に大切なるよりふ〕かんえう(肝要)に同じ。
腎臓でも心臓でも「こころ、気持ち」だとか「大切、大事なこと」みたいな意味に用いられている。
●決潰→決壊
《漢語大詞典》
>決潰
> 1.指堤防被水沖破。
>  《宋史‧河渠志三》:“增堤益防,惴惴恐決,澄沙淤泥,久益高仰,一旦決潰,又復北流。”
> 2.潰爛流膿。
>  宋歐陽修《汝癭答仲儀詩》:“癰瘍暫畜聚,決潰終當涸。”
>決壞
> 1.沖決。
>  《史記‧平準書》:“緣河之郡隄塞河,輒決壞,費不可勝計。”
> 2.毀壞。
>  宋蘇軾《秦始皇論》:“凡所以治天下者,一切出於便利,而不恥於無禮,決壞聖人之藩墻,而以利器示天下。”
大日本国語辞典
>決潰
> 溢るるやうになりて切れつひゆること。充ちて裂け潰ゆること。
>決壞
> 堤防など、きれくづるること。又、きりくづすこと。
「決」の字自体に水が堤防を切るという意味があって、「決潰」も「決壊」もその意味を強調している。
「決潰」「決壊」以外にも「決」がつく熟語を調べると同じような意味の熟語がいっぱいある。
●広汎→広範
ciniiで「廣範」と検索したら、志賀潔《歐米に於ける電氣收塵法實施の状況(昭和四年六月十五日燃料協會第七十一囘例會講演)》(1929/09)という論文がでてきた。
140926_3.jpg
《明鏡国語辞典》の「広範・広汎」の項に、
>〔表記〕もと「広汎」が主流。今は「広範」で定着。
とある。
●全潰→全壊
googlebooksで検索したらでてきたけどリンクのしかたがよくわからない。自分で検索してみて。
「半潰→半壊」もある。どっちも「崩潰→崩壊」の派生語と思われる。
●倒潰→倒壊
《漢語大詞典》
>倒潰
> 倒塌崩潰。
>  郭沫若《創造十年續篇》四:“永安公司和先施公司的兩座高塔就像在動搖,就像幾時要向那人濤中倒潰下來的光景。”
>倒壞
> 倒塌崩壞。
>  清黃六鴻《福惠全書‧蒞任‧詳文贅說》:“復有四年之奇荒,七年之地震……屋舍盡皆倒壞,男婦壓死萬餘。”
ciniiで検索したら、河野輝夫《木造建築物(無壁1階建)の振動實驗》(1938/11)がでてきた。
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最近出来た語で、これも「崩潰→崩壊」の派生語らしい。
●破毀→破棄
《漢語大詞典》
>破毀
> 1.摧毀,破壞;殘破毀壞。
>  《管子‧七法》:“是故張軍而不能戰,圍邑而不能攻,得地而不能實,三者見一焉,則可破毀也。”
> 2.破滅。
>  李大釗《再論新亞細亞主義》:“在日本的大亞細亞主義既經破毀以後,亞洲全民眾聯合起來加入世界的組織。”
>破棄
> 破除;拋棄。
>  宋胡仔《苕溪漁隱叢話前集‧山谷上》:“張文潛云:‘以聲律作詩,其末流也,而唐至今詩人謹守之。獨魯直一掃古今,出胸臆,破棄聲律,作五七言,如金石未作,鐘磬聲和,渾然有律呂外意。’”
大日本国語辞典
>破毀
> 1.やぶりこぼつこと。やぶれこはるること。
> 2.【法】(略)
>破棄
> やぶりすつること。
意味が違う。「破毀」は壊すイメージで、「破棄」はすてる・除くイメージ。
●哺育→保育
《漢語大詞典》
>哺育
> 1.喂養。
>  洪深《戲的念詞與詩的朗誦》一:“她在貧困中亦曾哺育嬰孩一個時期。”
> 2.比喻培養;培育。
>  杜鵬程《保衛延安》第八章:“哦,這從母親那偉大而慈善的心裏流出來的感情,在苦難的時日裏,給了人多少力量,哺育了多少生命啊!”
>保育
> 1.養育。
>  《後漢書‧清河孝王慶傳》:“皇子肇保育皇后,承訓懷衽,導達善性,將成其器。”
> 2.今專指對兒童的保健養育。
《大日本国語辞典》には「保育」しか載っていない。
「哺育」は「保育」に比べて「食べさせて育てる」意味が強いらしい。
国語辞典には「哺育」は動物に使うと書いてあるが、ciniiで検索するとでてくる、R.H.生《嬰兒の哺育》(1909/02)は人間の育児について書いているし、食べさせるような感じでもない。
●崩潰→崩壊
《漢語大詞典》
>崩潰
> 1.倒塌毀壞。
>  漢應劭《風俗通‧正失‧孝文帝》:“關東二十九山,同日崩潰。”
> 2.瓦解潰散。
>  《後漢書‧東夷傳序》:“陳涉起兵,天下崩潰。”
> 3.碎裂。
>  南朝陳徐陵《為貞陽侯與太尉王僧辯書》:“羌虜無厭,乘此多難,虔劉我南國,蕩覆我西京,奉聞驚號,肝膽崩潰。”
>崩壞
> 1.塌毀。
>  漢枚乘《七發》:“覆虧邱陵,平夷西畔。崩壞陂池,險險戲戲。”
> 2.敗壞衰落。
>  《漢書‧五行志下之上》:“君道崩壞,下亂,百姓將失其所矣。”
ciniiで「崩壊」と検索したら《山嶽崩壊》(1891)というのが出てきた。
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●理窟→理屈
《漢語大詞典》
>理窟
> 1.義理的淵藪。謂富於才學。
>  《晉書‧張憑傳》:“帝召與語,歎曰:‘張憑勃窣為理窟。’”
> 2.指義理的奧秘。
>  元侯克中《輓姚左轄雪齋》詩:“深探理窟得心傳,洞徹先天與後天。”
>理屈
> 1.理虧;理由被駁倒。
>  晉桓玄《與八座桓謙等論沙門應致敬書》:“何庾雖已論之,而並率所見未是,以理屈也。”
> 2.謂以理折服對方。
>  京劇《將相和》第六場:“如此,理屈強秦,方為兩全之策。”
この「理屈」は理が屈していることで、「理窟」とは別の意味。
でもGoogilebooksで「理屈」と検索すると19世紀でも「理窟」の意味で使ってる例がめちゃくちゃたくさんでてきた。
「理屈」は本義ではあまり使われなかったらしい。


ということで全て戦前から使われていた。
うち「潰乱・壊乱」「破毀・破棄」「哺育・保育」「理窟・理屈」は意味に違いが見られるが、
「哺育・保育」は使い分けられてないし、「理窟・理屈」はほとんど「理窟」の意味でしか用いられていない。