2016/04/09

《大漢和辞典》第一巻中の難字2

【𠋜】【䣏】【𠋞】【𠌕】【㑸】 【𠌚】【𠌞】【𠍚】【𠍛】【𠍝】
【𠍗】【𠍃】【𠎭】【𠏛】【𠏽】 【𠏽】【𠐠】【𠐹】【𠑐】【𠑞】
【𠑡】【𠑰】【𠒏】【𠒮】【𠓊】 【𠓙】【𠓞】【𠓣】【𠇒】【𠓦】
【𠓿】


【𠋜】915 クワ・シン 義未詳 〔海篇〕𠋜、音過、又音信。
《篇海》卷十五《人部》九畫引《搜真玉鏡》 (516b)
  [⿰亻⿱小言],古臥切。又音信字。
 「𠋜」は「⿰亻⿱小言」の訛、「⿰亻⿱小言」は「諐」が変化した字である。
 《篇海》卷十五《人部》十畫引《搜真玉鏡》「[⿰亻䓂],古臥切。」(516d)、同十一畫引《搜真玉鏡》「[⿰亻𧥿],信、過二音。」(517b)、「𠋜」「⿰亻䓂」「⿰亻𧥿」は近形同音、おそらく同一字種である。
 「諐」は《説文》十篇下《心部》「愆,過也。諐,籒文。」とある。字はまた「⿰亻𧥥」に作る。《可洪音義》卷三十《廣𪪺明集》第二十二卷音義「[⿰亻𧥥],丘𠃵反。」(60/576b)対応経文:《廣弘明集》卷二十「育王莫大之愆。」(T52,p0256b)、「⿰亻𧥥」は「諐」が変化した字である。唐《梁嘉運墓誌》「六行莫[⿰亻𧥥]」(参《碑別字新編》(336)、《廣碑別字》(555))、S.799《隸古定尚書》「弗[⿰亻𧥥]于六𡵯七𡵯」(今文「不愆于六步七步」)(参《敦煌俗字典》(319))、P.2748《古文尚書》「時人丕則有[⿰亻𧥥]。……。厥[⿰亻𧥥],曰:“朕之[⿰亻𧥥]。”」(今文「時人丕則有愆。……。厥愆,曰:“朕之愆。”」)は全てその例。
 「⿰亻⿱小言」「⿰亻䓂」「⿰亻𧥿」は「⿰亻𧥥」が変化した字であり、ゆえに「諐」が変化した字である。「古臥切=音過」は望訓生音、「音信」は望形生音。《考釋》(32)、《續考》(525)参照。

【䣏】916 ケイ 義未詳 〔海篇〕䣏、音經。
《龍龕》卷四《邑部》平聲 (453)
  ,俗。,正。音恭。亭名,邑名。二。
 「䣏」は「䢼」の加旁異体字である。《慧琳音義》卷八十四《古今譯經圖記》第一巻音義「䢼亭湖,今譯《經圖記》中從人作“䣏亭”,書寫誤也。」(3276)、《可洪音義》卷二十四《古今譯經圖紀》第一巻紀文音義「䣏,居容反。𠅘名也。正作䢼。」(60/336c)、対応経文:唐・靖邁撰《古今譯經圖紀》卷一「遂行達䣏(宋、元、明本作“䢼”)亭湖廟。」(T55,p0348c)。「音經」は「音恭。亭名。」を「音恭亭切。」と読み誤ったものである。

【𠋞】919 チ 義未詳 〔字彙補〕𠋞、音地。
《龍龕》卷一《人部》平聲 (25)
  𠋞,俗。音虵。
 待考。「音地」は「音虵」の誤り。
 「虵(蛇)」の加旁異体字の可能性がある。《漢語大字典・人部》「𠋞,…。按:疑即“虵(蛇)”的俗字。」(229a)。

【𠌕】995 キヨウ 義未詳 〔篇海大成〕𠌕、音共。
《篇海》卷一《雑部》平聲 (260b)
  𠌕,渠脂切。
 「𠌕」は「𠁭」が変化した字である。《廣韻》平聲《支韻》巨支切「𠁭,參差也。」(44)、「𠌕」「𠁭」は近形類音である。「音共=渠用切」は「渠脂切」の誤。

【㑸】998 エウ 義未詳 〔海篇〕㑸、音姚。
《篇海》卷十五《人部》十畫引《搜真玉鏡》 (516d)
  ,銀嬌切。
 「㑸」はおそらく「喬」あるいは「僑」が変化した字である。《廣韻》平聲《宵韻》巨嬌切「喬,髙也。」(150)。「喬」はまた「𠳮」に作る(参《干禄》平聲「𠳮喬,上俗下正。」)。「𠳮」「㑸」は近形同韻である。「銀嬌切」の上字「銀」は「鉅」の訛と思われる。

【𠌚】999 ロウ 義未詳 〔海篇〕𠌚、音弄。
《新修玉篇》卷三《人部》十畫引《類篇》 (26a)
  [⿰⿲亻丨丨⿱壬⿹𠃌廾],音弄。
《篇海》卷十五《人部》十畫引《類篇》 (516d)
  [⿰⿲亻丶丿⿱壬⿹𠃌廾],音弄。
《篇海》卷十五《人部》十畫引《搜真玉鏡》 (517b)
  [⿰⿲亻丨丨⿱王⿹勹廾],音弄。
 待考。

【𠌞】1000 ソウ 義未詳 〔字彙補〕𠌞、音叟。
《龍龕》卷一《人部》上聲 (31)
  [⿰亻⿱白反][⿰亻𦤁],舊藏作“叟”。蘇走反。又俗音魯。義不相應。二。
《字彙補》丑集《夊部》補字 (496c)
  𠌞,心走切,音叟。《篇韻》云:“俗音魯。與義不相應。”
 「𠌞」は「叟」が変化した字である。《可洪音義》卷二十七《續高僧傳》第六卷音義「[⿳𠂊旧夊],蘇走反。」(60/467b)対応経文:唐・道宣撰《續高僧傳》卷六「抑其前見之叟。」(T50,p0470a)、《新修玉篇》卷二十《白部》引《類篇》「[⿱伯皮],音叟。」(178d)、《篇海》卷七《白部》引《類篇》「[⿱伯皮],音叟。」(358c)、「⿳𠂊旧夊」「⿱伯皮」「𠌞」は近形同音、同一字種であり、全て「叟」の変化した字である。

【𠍚】1070 ケン 義未詳 〔字彙補〕𠍚、音蹇。
《字彙補》子集《人部》補字 (463b)
  𠍚,古㸃切,音蹇。出《釋典》。
 「𠍚」は、「偃蹇」「蹇偃」の「蹇」を「偃」に誤った字と思われる。大居司『篇韻貫珠集・篇韻拾遺に基づく疑難字考釋』(『日本漢字學會報』第1号P32)参照。

【𠍛】1071 エン 義未詳 〔字彙補〕𠍛、音偃。
《字彙補》子集《人部》補字 (463b)
  𠍛,于貶切,音偃。見《釋典》。
 「𠍛」は「偃」が変化した字である。上記1070「𠍚」、大居司『篇韻貫珠集・篇韻拾遺に基づく疑難字考釋』(『日本漢字學會報』第1号P32)参照。

【𠍝】1072 音義未詳 〔字彙補〕𠍝、音無考、見穆天子傳。
 原文は《穆天子傳・卷四》「好獻枝斯之石四十,𠍝𤕁𠢮𦉔珌佩百隻,琅玕四十,𩟜𡮖十篋。」である。「𠍝」「𤕁」「𠢮」「𦉔」「𩟜」「𡮖」など宝石名であろうが、この本は他にも奇字が数多い。

【𠍗】1074 クワイ 義未詳 〔海篇〕𠍗、音會。
《新修玉篇》卷三《人部》十一畫引《類篇》 (26b)
  𠍗,音會。
《篇海》卷十五《人部》十一畫引《類篇》 (517b)
  𠍗,音會。
 「𠍗」は「會」の異体字である。《玉篇》卷十五《會部》「會,胡外切。𣌭㞧,並古文。」(296)、「𠍗」は「𣌭」が変化した字である。

【𠍃】1075 キ 義未詳 〔海篇〕𠍃、音饑。
《龍龕》卷一《人部》平聲 (24)
  〾𠍃,俗。音〾飢。
 𠍃は訳音字、無義である。
 《玄應音義》卷十一《增一阿含經》第十七卷音義「拘翅,施豉反,或作俱耆羅鳥,梵言訛耳。此鳥聲好形醜,從聲爲名也。經文作𠍃、𪅌二形,非也。」(507)、《可洪音義》卷二十五《一切經音義》第十一卷音義「𠍃𪅌,上音飢,下音梨,都是飢字切脚也。見兩本作狗飢,一本作拘𠍃,並經文作居梨反,鳥名,拘𠍃羅也。𪅌字是飢字韻也。應和尚以拘翅字替之,非也。」(60/367b)、これらによれば「𠍃」「𪅌」は「飢」の切脚字(反切下字)であり、「狗飢(𠍃)」の二字で「居梨反」と読み、鳴き声からとられた鳥名「拘𠍃羅」を表すという。対応経文:東晋・瞿曇僧伽提婆譯《增壹阿含經》卷十七「有此四鳥。云何為四?或有鳥聲好而形醜,或有鳥形好而聲醜,或有鳥聲醜形亦醜,或有鳥形好聲亦好。彼云何鳥聲好而形醜?拘翅羅(宋、元、明本作“拘抧羅”)鳥是也。是謂此鳥聲好而形醜。」(T02,p0634b)。
 「飢」「𠍃」「𪅌」「抧」は全て「居梨反」の反切下字を担う訳音字である。《叢考》(63)は「𠍃」を「飢」の加旁異体字とするが誤り、「𠍃」「飢」は異文であるが異体字ではない。《考正》(9)参照。

【𠎭】1140 音義未詳 〔字彙補〕𠎭、音義未詳。
 待考。

【𠏛】1208 キヨ 義未詳 〔字彙補〕𠏛、求于切、音渠。
《龍龕》卷一《人部》平聲 (28)
  [⿰亻⿸广⿳旦八力],俗。[⿰亻豦],通。音渠。二。
《新修玉篇》卷三《人部》十二畫引《古龍龕》 (26d)
  [⿰亻⿸广⿱目夯][⿰亻豦],二音渠。
《篇海》卷十五《人部》十二畫引《龍龕》 (517d)
  [⿰亻⿸广⿱共力][⿰亻豦],二音渠。
《字彙補》子集《人部》補字 (463d)
  𠏛,求于切,音渠。義闕。
 「𠏛」は「⿰亻⿸广⿳旦八力」の訛、「⿰亻⿸广⿳旦八力」は「⿰亻豦」が変化した字である。なお、「⿰亻豦」は「詎」の異体字である。《考正》(13)参照。

【𠏽】1243 音未詳 人名。 〔字彙補〕𠏽、印藪有孔𠏽印。
 待考。

【𠐠】1266 音義未詳 〔字彙補〕𠐠、方國之𠐠、言國之𠐠、乳國之𠐠、見元子、音未詳。
 待考。

【𠐹】1286 音未詳 𠐹伽は銀錢をいふ。 〔字彙補〕𠐹、音未詳。〔瀛州勝覽〕榜葛刺市、用銀錢曰𠐹伽。
 「𠐹」は「儻」が変化した字である。《西洋朝貢典錄》卷中「其交易以銀錢,名曰倘伽。」とあり、それを引いて《廈門志》卷八「儻伽」とある。《字鑑・上聲》に「儻,…。俗作“倘”。」とある。「𠐹」は「儻」の字形を誤ったものである。

【𠑐】1320 ゲウ 義未詳 〔海篇〕𠑐、音堯。
《篇海》卷一《雑部》平聲 (260a)
  𠑐,音尭。
 待考。《古俗字略》卷二《蕭韻》(50c)は「堯」の古字とする。

【𠑞】1320 サイ 義未詳 〔海篇〕𠑞、音寨。
《篇海》卷十五《人部》十六畫引《搜真玉鏡》 (518d)
  [⿲亻丨⿱臾退],直介切。
 「𠑞」は「⿲亻丨⿱臾退」の訛、「⿲亻丨⿱臾退」は「⿰介遺」が変化した字である。
 明州本《集韻》去聲《夬韻》除邁切「[⿰介遺],遺也。」(529)とあり、「𠑞」「⿰介遺」は同音である。「貴」はまた「䝿」に作り(《干禄・去聲》「貴䝿,上通下正。」)、「⿰介遺」が変化したのが「𠑞」である。字はまた「𠑌」に作り、《類篇・辵部》「𠑌,除邁切。遺也。」とある。また「𫵒」に作り、明州本以外の《集韻》同位置には「𫵒,遺也。」とある。また「⿺辵貴」に作り、《五音集韻》去聲《怪韻》除邁切「[⿺辵貴],遺也。」とある。
 「遺」は「排泄する」の意味があり、《史記・廉頗藺相如列傳》「廉將軍雖老,尚善飯,然與臣坐,頃之三遺矢矣。」司馬亭索隱「謂數起便也。矢一作屎。」、《漢書・東方朔傳》「先是,朔嘗醉入殿中,小遺殿上,劾不敬。」などに例がある。また呉語方言で「寨」に「排泄する」の意味があり、《漢語方言大詞典》「寨污,〈动〉大便。吴语。浙江宁波。应钟《甬言稽诂・释疾病》:“今称大便曰~。”」(6947)などに例がある。
 したがって「⿰介遺」は「介」(「寨」と同韻)を声符「遺」を意符とする「寨」の形声異体字であり、「𠑞」はその変体である。《越諺》卷下《疊文成義》「𠑞,寨。謂出大恭、小解、痢疾不止者也。《篇海》。」に例がある。《續考》(528)参照。

【𠑡】1321 テン 義未詳 〔海篇〕𠑡、音諂。
《新修玉篇》卷三《人部》十七至十八畫引《奚韻》 (27d)
  𠑡,丑咸切。行𠑡。
《篇海》卷十五《人部》十八畫引《奚韻》 (519a)
  𠑡,丑咸切。行―也。
 「𠑡」は「𠐩」が変化した字である。
 《廣韻》上聲《范韻》丑犯切「𠑆,𠑆行。」(338)、「𠑡」「𠑆」は同音同義である。また《玉篇》卷三《人部》「𠐩,丑減切。癡也。」(57)、《名義》卷三《人部》「[⿰亻𨵁],丑减反。癡也。」(21a)、《集韻》上聲《范韻》丑犯切「𠐩,癡也。」(457)、《類篇》卷八上《人部》「𠑑,五(丑)感切。癡也。又丑減切,又丑犯切。」(284b)、「𠐩」「⿰亻𨵁」「𠑑」「𠑆」は近形同音同義である。
 上の字は全て近形同音であり、「𠐩」の変化した字である。「行𠑡」「𠑆行」はおそらく妄補・妄改で、「癡也」の誤りである。《玉篇疑難字研究》(324)参照。

【𠑰】1333 キン 義未詳 〔海篇〕𠑰、音欣。
《篇海》卷一《雑部》去聲 (260b)
  𠑰,許禁切。
 「𠑰」は「鑫」が変化した字である。「鑫」は《玉篇》卷十八《金部》「鑫,呼龍切。又許金切。」(330)とあり、「𠑰」と近形同音である。「金」旁は俗に「舍」に作る(参《正字通》卷十六《金部》「鋪,俗作舖。」)ため、「鑫」もまた「𠑰」に作る。「禁」は平・去二声をもつ(参《廣韻》(220,441))ため、《篇海》は誤って去声字としているが、正しくは平声字である。

【𠒏】1379 音未詳 元始上皇丈人の字。 〔字彙補〕𠒏、元始上皇丈人法字、𠒏、見三尊譜録。
 待考。《正統道藏》では「⿱𡗗无」に作る。

【𠒮】1398 音未詳 卜兆の一。 〔論衡、卜笙〕武王伐紂、卜之而龜𠒮。
 「𠒮」は「皵」の換旁異体字である。《考釋》(437)参照。

【𠓊】1407 タン 義未詳 〔字彙補〕𠓊、丁甘切、音丹。
《龍龕》卷一《光部》平聲 (180)
  𠓊,俗。,正。音暉。光―也。二。
 「𠓊」は「輝」が変化した字である。「軍」「單」は近形のため俗に換旁される。《可洪音義》卷十三《中本起經》下卷音義「撣,正作揮。」(59/1032a)はまたその例である。「音丹=音單」は望形生音の誤。

【𠓙】1414 キュウ 義未詳 〔字彙補〕𠓙、香沖切、音𧽀。
《篇海》卷一《雑部》去聲 (260c)
  [⿱⿰⿺先丶⿺先丶⿰⿺先丶⿺先丶],香仲切。
 「𠓙」は「耄」の異体字である。「⿺先丶」旁は「老」が変化したもの。「香沖切」は「香仲切」の訛、「香仲切」は誤り。《考釋》(45)参照。

【𠓞】1421 シツ 義未詳 〔海篇〕𠓞、音疾。
《新修玉篇》卷十五《入部》引《川篇》 (140b)
  𠓞,子入切。
《篇海》卷十五《入部》引《川篇》 (521d)
  𠓞,子入切。
 「𠓞」は「亼」が変化した字である。《説文》卷五下《亼部》「亼,三合也。」、《廣韻》入声《緝韻》秦入切「𠓛,《説文》云:“三合也。”又子入切。」(532)、「𠓞」「亼」「𠓛」は近形同音、同一字種である。《考釋》(35)参照。

【𠓣】1428 タフ 義未詳 〔海篇〕𠓣、音箚。
《龍龕》卷四《入部》 (528)
  𠓣,宅田反。
 待考。

【𠇒】1429 キヨウ 義未詳 〔海篇〕𠇒、音供。
《新修玉篇》卷十五《入部》引《川篇》 (140a)
  𠇒,音供。
《篇海》卷十五《入部》引《川篇》 (521d)
  𠇒,音供。
 待考。《古俗字略》卷四《宋韻》(107d)は「𠇒」を「供」の古字としている。

【𠓦】1434 音義未詳 〔字彙補〕𠓦、音未詳、見佩觿辨證。
《字彙補》子集《入部》補字 (469a)
  㒴𠓦,二字見《佩觿辨證》。㒴,音骨,出也。𠓦,音未詳。
 「㒴」「𠓦」は「甶」が変化した字である。《佩觿》卷三「田甶,上徒年翻,土田。下分物翻,鬼頭。」とある。杨宝忠(2015)《〈汉语大字典〉人部疑难字考释》02[𠓦]参照。

【𠓿】1449 キン 義未詳 〔海篇〕𠓿、音琴。
《新修玉篇》卷十五《入部》引《川篇》 (140a)
  [⿳入韭韭],音琴。
《篇海》卷十五《入部》引《川篇》 (521c)
  [⿳入韭韭],音琴字。
 「𠓿」は「⿳入韭韭」の訛、「⿳入韭韭」は「琴」の説文古文を楷書化した字である。《考釋》(42)参照。なお「琴」の説文古文は楚文字による。

2016/04/07

《大漢和辞典》第一巻中の難字1

【𠀓】【𠀦】【𠀸】【𠁠】【𠂐】 【𠂟】【𠂧】【𠪃】【𠧝】【𠂸】
【𠃺】【𤱡】【㐤】【𥝀】【𠄿】 【亠】【𠅂】【𠅚】【𠅦】【𠆋】
【𠆐】【𠆑】【𠆚】【𠆟】【𠇳】 【𠇵】【𠇯】【𠈦】【𠊏】【𠋗】

2016/03/21

《漢辞海》中の難字

《漢辞海》のような一般的な小型~中型漢和辞典には疑難俗字はふつう収録されない。
《漢辞海》では「常用漢字+人名用漢字+JIS1~4補+α」を収録基準にしているようなので、難字(音義が欠けた字)を収録する必要もないし理由もない。
だが、和製漢字と衝突している別の字があった場合はその字が義未詳であっても収録しているようだ。

ざっと確認した所、以下の18字を発見した。











𥞩
𥸮
𥹖

𨉷
𨛺




CJK-Fと《中華字海》

CJK-Fのうち《中華字海》に収録されているものを書きだした

部首1画~2画のみ
誤りや抜けがあったらコメントください

2016/07/14 口部12画(2d2c1)まで追加



コード番号,《字海》ページ数(abcは段落)
2ceb5,1c
2cec3,4c
2ceeb,9b
2cf0c,20c
2cf29,508a
2cf2a,114b
2cf35,321b
2cf3a,973a
2cf44,131b
2cf49,132a?
2cf54,136b
2cf5d,141a
2cf64,65b
2cf67,66a
2cf6c,68a
2cf6d,68a
2cf7c,71b
2cf7e,73a
2cf7f,73a
2cf81,73c
2cf83,73b
2cf89,74c
2cf8c,75c
2cf95,103c
2cf97,76c
2cfa2,80c
2cfa8,80a
2cfcf,87a
2cfdc,89a
2cff5,92b
2d000,94b
2d002,94c
2d012,97c
2d026,707a
2d046,112c
2d049,113c?
2d061,4c
2d062,4b?
2d066,63b
2d068,63b
2d07a,152a
2d08a,146a
2d098,147c
2d0a2,149a
2d0c4,31a
2d0c5,50a
2d0c6,50a
2d0cc,189b
2d0e1,982b
2d0ed,54b
2d0fa,56a
2d116,60a
2d11b,60c
2d129,196a
2d12b,196a
2d12d,196b
2d136,197a
2d138,197c
2d13a,197c
2d13f,198b
2d143,198c
2d147,127c
2d152,1284b
2d153,125b
2d15b,46a
2d172,154a
2d175,798b
2d183,36b
2d186,37c
2d187,37b


2d1b8,380c
2d1b9,99c?
2d1ba,381b
2d1bc,381b
2d1c2,382b
2d1c5,383c
2d1d4,387c
2d1eb,392a
2d1f6,393c
2d1f9,395b?
2d206,395b
2d20c,398a
2d211,399b
2d21b,399c
2d222,392b
2d23b,403c
2d23d,409b?
2d24b,410b?
2d24c,401b
2d25e,402b
2d268,409b
2d26e,410c
2d277,406b
2d283,411c
2d294,413c
2d295,414b
2d29b,414b
2d2b4,417b
2d2b5,417b
2d2be,419a
2d2bf,419a

2016/01/17

字典類の紹介8《秦簡牘文字編》

方勇 編著 (2012/12) 《秦簡牘文字編》 福建人民出版社

160117_1.jpg
どちらかというと薄い。

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 本書は戦国・秦の簡牘の字を字種毎に配列したものである。各字形は図版をコンピューター処理したものである。ただし字形がわかりにくいもののみ図版写真あるいは模本を載せている。
 各字形には出典が付してある。通仮字の場合はその旨が併記される。一部の字には注釈が有り、巻末にまとめてかなり詳しく書かれている。
 配列は説文順。卷一~卷十四の後に合文・附録(隷定不可字)がある。巻末に筆画索引と釋字輯要(注釈)がある。
 睡虎地秦簡以外の字(龍崗、關沮、嶽麓など)を収録している点で《秦簡文字編》《睡虎地秦簡文字編》などより優れている。特に張守中《睡虎地秦簡文字編》は模本(しかも似てない)なのであまり使いものにならない。
 値段は168元(3000円)、日本で買うと9000円くらい。

2016/01/16

字典類の紹介7《上博藏戰國楚竹書字匯》

饒宗頤 主編、徐在國 副主編 (2012/10) 《上博藏戰國楚竹書字匯》 安徽大學出版社

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なかなか厚い。ちなみにページの紙一枚は薄い。

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 本書は《上海博物館藏戰國楚竹書》(一)~(七)の字を字種毎に配列したものである((八)、(九)の字は収録していない)。各字形は図版をコンピューター処理したものである。ただし字形がわかりにくいもののみ図版写真をそのまま載せている。
 各字形には出典が付してある。出典は数字で表されているので凡例にある対応表をいちいち見なくてはならない。
 配列は康煕をもとにしたオリジナルの部首筆画順なので直接引くのは難しい。一部~龜部のあとに待識字(隷定不可字)、殘字(字形が不鮮明な字)の項目がある。巻末に筆画索引・拼音索引・おまけの論文が二篇ある。
 《楚系簡帛文字編》(上博楚簡(一)、(二)の字を収録している)と比べると、字形が正確である分優れているが、釈文が載っていないことが欠点である。また、(六)・(七)の字が収録されている点を除けば《上海博物館藏戰國楚竹書(一-五)文字編》のほうが、配列が説文順である、《香港中文大學文物館藏簡牘》の字も収録している、文字だけでなく記号(句読点や卦畫)も収録している、各字形が簡内の何文字目かが付記してある、同一字種内を字体毎に分類している、一部の字形に軽い解説がある、巻末に総釈文が載っている、等の点で優れているといえる。
 値段は228元(4000円弱)。日本で買うと10000円くらいか。

字典類の紹介6《三晋文字編》

湯志彪 編著 (2013/10) 《三晋文字編》 作家出版社

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六分冊。かなり場所をとる。



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 本書は春秋・戦国時代の三晋系文字(趙、魏、韓、中山、両周、鄭、衛といった国で使われていた字)を字種毎に配列したものである。各字形は拓本・あるいは写真をそのまま切り貼りしたもの(ゴミ取りはしていない)。一字一字が大きいのでわかりやすい。
 各字形には出典・釈文・国・時代が付してある。同一字種内は石器・銅器・兵器・璽印・陶分・貨幣・雑器の順に、同一材料内は国順、同一国内は時代順に配列されている。
 配列は説文順、卷一~卷十四のあとに合文・附録(隷定不可字)がある。また巻末に資料来源及釈文・部首筆画索引・拼音索引がある。附録は索引からは検索不可能である。
 一字一字が大きいだけでなく、収録範囲もかなり広い。また各字形に釈文がついているだけでなく、最後に出典とした器物全ての釈文が載っているので字形をみること以外の用途にも使える。
 値段は3650元(約65000円)、日本で買えば10万円台になる。
 ちなみにこの本は《國別文字編》シリーズの一番目として出版された。現在は二番目の張振謙《齊魯文字編》、三番目の劉孝霞《秦文字編》も既に出版されている。いずれも六分冊である。
 《齊魯文字編》は西周~戦国時代の齊魯系文字(魯、邾、郳、滕、薛、費、曹、郜、杞、齊、逢、邿、鑄、戴、鄩、過、萊、紀、㠱、諸、莒といった国で使われていた字)を収録している。附録と釈文の間に《齊魯文字字形差異表》という章があり、齊魯系文字をさらに分け、齊莒系文字と魯邾系文字の字体の違いが解説されている。