2018/08/20

「柿/杮(かき/こけら)」の書き分けは絶対ではない

漢字には、「シ(音)、かき(訓)」と読む字と、「ハイ(音)、こけら(訓)」と読む字がある。字源も表す語も異なる、別字種である。

本やTV番組やインターネット等で、この両字について「「かき」の旁は5画で、「こけら」の旁は縦棒を貫いて4画で書く」のだという意見が存在する。両字を書くときに、この書き分けをすることは問題ない
しかし、さらに、「上記の書き分けをしなければ誤りである」つまり「旁を5画で書くのが「かき」で、旁を4画で書くのが「こけら」である」という考えも存在している。が、このような「書き分けなければならない」という考えは不適である
世の中には「漢字は、各1字が、それぞれ別のたった1つの字体をもつ」のような考え方が強かれ弱かれ存在し(この考え方こそが誤りである)、「かき」と「こけら」の書き分けもその考えから生まれたものだと思われる。

「かき」と「こけら」の書き分け問題は、「I(大文字アイ)」と「l(小文字エル)」のそれに似る。
「大文字アイ」と「小文字エル」は基本的には両方とも縦棒1本であるが、長さを変えたり、端部を曲げたり、あるいは上や下に短い横棒(セリフ)をくっつけたりして区別することもある。このような区別(書き分け)は、人によって異なり、「こう書かなければならない」といったルールは存在しない。「「かき」の旁を5画にして「こけら」の旁を4画にする」というのも、書き方で両字を区別する方策の一例でしかない。

中国の印刷字体を見るとたしかに「旁5画=「かき」、旁4画=「こけら」」が規範となっているが、日本にはそのような決まりはない。「かき」は常用漢字なので(少なくとも漢字テストにおいては)旁5画で書くべき字であると思われるが、「こけら」は表外字なので基準はなく、「かき」同様に旁5画で書いても誤りとはいえない。