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2016/09/01

字典類の紹介10《包山楚墓文字全編》

李守奎、賈連翔、馬楠 編著 (2012/12) 《包山楚墓文字全編》 上海古籍出版社
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A4より少し小さいサイズ。

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 本書は《包山楚墓》より出土した簡牘・馬甲などの字を字種毎に配列したものである。各字形は図版をコンピューター処理したものである。
 字頭の下に説文小篆・古音が掲載され、その下に各字形が並ぶ。各字形には出典・辞例と一部には注釈がある。
 配列は説文順。卷一~卷十四の後に合文・附録(隷定不可字や卦畫など)と総釈文・声韻表がある。巻末に拼音索引と筆画索引がある。
 この字書の「全ての字を網羅している」「最新技術を用いて、模本でない綺麗な字形を掲載している」「最新の考釈の成果を反映させている」などといった売りが前言に詳しく書いてある。張守中《包山楚簡文字編》等の以前の字書のレビューも書いてある。
 値段は198元。

2016/08/24

字典類の紹介9《商代金文全編》

畢秀潔 編著 (2012/12) 《商代金文全編》 作家出版社
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四分冊。

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 本書は殷・商代の金文の字を字種毎に配列したものである。各字形は拓本をそのまま切り取ったものである。各字形には時代と出典が併記してある。
 配列は説文順。卷一~卷十四の後に附録(図形要素の強い字・隷定不可字)・殘字(不鮮明な字)がある。巻末に部首筆画索引・拼音索引と器名からの索引がある。
 値段は2680元。

2016/01/17

字典類の紹介8《秦簡牘文字編》

方勇 編著 (2012/12) 《秦簡牘文字編》 福建人民出版社

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どちらかというと薄い。

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 本書は戦国・秦の簡牘の字を字種毎に配列したものである。各字形は図版をコンピューター処理したものである。ただし字形がわかりにくいもののみ図版写真あるいは模本を載せている。
 各字形には出典が付してある。通仮字の場合はその旨が併記される。一部の字には注釈が有り、巻末にまとめてかなり詳しく書かれている。
 配列は説文順。卷一~卷十四の後に合文・附録(隷定不可字)がある。巻末に筆画索引と釋字輯要(注釈)がある。
 睡虎地秦簡以外の字(龍崗、關沮、嶽麓など)を収録している点で《秦簡文字編》《睡虎地秦簡文字編》などより優れている。特に張守中《睡虎地秦簡文字編》は模本(しかも似てない)なのであまり使いものにならない。
 値段は168元(3000円)、日本で買うと9000円くらい。

2016/01/16

字典類の紹介7《上博藏戰國楚竹書字匯》

饒宗頤 主編、徐在國 副主編 (2012/10) 《上博藏戰國楚竹書字匯》 安徽大學出版社

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なかなか厚い。ちなみにページの紙一枚は薄い。

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 本書は《上海博物館藏戰國楚竹書》(一)~(七)の字を字種毎に配列したものである((八)、(九)の字は収録していない)。各字形は図版をコンピューター処理したものである。ただし字形がわかりにくいもののみ図版写真をそのまま載せている。
 各字形には出典が付してある。出典は数字で表されているので凡例にある対応表をいちいち見なくてはならない。
 配列は康煕をもとにしたオリジナルの部首筆画順なので直接引くのは難しい。一部~龜部のあとに待識字(隷定不可字)、殘字(字形が不鮮明な字)の項目がある。巻末に筆画索引・拼音索引・おまけの論文が二篇ある。
 《楚系簡帛文字編》(上博楚簡(一)、(二)の字を収録している)と比べると、字形が正確である分優れているが、釈文が載っていないことが欠点である。また、(六)・(七)の字が収録されている点を除けば《上海博物館藏戰國楚竹書(一-五)文字編》のほうが、配列が説文順である、《香港中文大學文物館藏簡牘》の字も収録している、文字だけでなく記号(句読点や卦畫)も収録している、各字形が簡内の何文字目かが付記してある、同一字種内を字体毎に分類している、一部の字形に軽い解説がある、巻末に総釈文が載っている、等の点で優れているといえる。
 値段は228元(4000円弱)。日本で買うと10000円くらいか。

字典類の紹介6《三晋文字編》

湯志彪 編著 (2013/10) 《三晋文字編》 作家出版社

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六分冊。かなり場所をとる。



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 本書は春秋・戦国時代の三晋系文字(趙、魏、韓、中山、両周、鄭、衛といった国で使われていた字)を字種毎に配列したものである。各字形は拓本・あるいは写真をそのまま切り貼りしたもの(ゴミ取りはしていない)。一字一字が大きいのでわかりやすい。
 各字形には出典・釈文・国・時代が付してある。同一字種内は石器・銅器・兵器・璽印・陶分・貨幣・雑器の順に、同一材料内は国順、同一国内は時代順に配列されている。
 配列は説文順、卷一~卷十四のあとに合文・附録(隷定不可字)がある。また巻末に資料来源及釈文・部首筆画索引・拼音索引がある。附録は索引からは検索不可能である。
 一字一字が大きいだけでなく、収録範囲もかなり広い。また各字形に釈文がついているだけでなく、最後に出典とした器物全ての釈文が載っているので字形をみること以外の用途にも使える。
 値段は3650元(約65000円)、日本で買えば10万円台になる。
 ちなみにこの本は《國別文字編》シリーズの一番目として出版された。現在は二番目の張振謙《齊魯文字編》、三番目の劉孝霞《秦文字編》も既に出版されている。いずれも六分冊である。
 《齊魯文字編》は西周~戦国時代の齊魯系文字(魯、邾、郳、滕、薛、費、曹、郜、杞、齊、逢、邿、鑄、戴、鄩、過、萊、紀、㠱、諸、莒といった国で使われていた字)を収録している。附録と釈文の間に《齊魯文字字形差異表》という章があり、齊魯系文字をさらに分け、齊莒系文字と魯邾系文字の字体の違いが解説されている。

2016/01/11

字典類の紹介5《先秦貨幣文字編》

呉良寶 編纂 (2006/3) 《先秦貨幣文字編》 福建人民出版社

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めっちゃ薄い。

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 本書は春秋・戦国時代の貨幣銘文を字毎に配列したものである。各字形は拓本・あるいは写真をそのまま切り貼りしたもの(ゴミ取りはしていない)。
 本文のデザインはおおむね《古幣文編》を踏襲している。各字形には貨幣の種類・釈文・出典が付してある。同一字種内は貨幣のおおよその時代順に並んでいる。
 配列は説文順、卷一~卷十四のあとに合文・附録(隷定不可字)がある。また巻末に筆画索引がある。附録は索引からは検索不可能である。
 《古幣文編》をもとにしているので基本的に《古幣文編》よりは優れている。しかし《先秦貨幣文編》よりは一字あたりの字例が少ない。ただ貨幣の種類が記載されておらずまた出典がわかりづらい《先秦貨幣文編》と比べると、総合的な貨幣写真集を出典とする本書は字体と貨幣の種類との関連付けがしやすいといえる。
 値段は98元(2000元弱)、日本で買うと6000円くらい。

字典類の紹介4《古陶字録》

高明、涂白奎 編著 (2014/9) 《古陶字録》 上海古籍出版社

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わりと薄い。



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 前の記事の《陶文字典》同様、陶文の字書である。《陶文字典》と異なるのは、各字形がコンピューター処理(ゴミ取り等)後に白黒反転したものになっている点である。また、戦国・秦代に限らず商・周代の陶文も収録している。出典は《古陶文彙編》が中心だが《陶文圖録》ほか多くの拓本集から収録している。
 各字形には出土地・出典・時代が付してある。出土地はどの国で用いられた字体なのかの手がかりとなるのでありがたい。ごく一部の字には軽い解説がある。
 この字書は左ページから読むようになっている(珍しい)。配列は第一編「單字」は康煕字典順に近いがよくわからない順番になっている。第一編のあとに第二編「合文」・第三編「附録」(隷定不可字)がある。巻末に筆画索引がある。第三編の字は検索不可能。
 薄さからわかるように字例はかなり少ない。「きれいな字が見られる」という点がこの字書の利点だろうか。
 値段は148元(3000円弱)、お手頃価格だ。日本で買うと8000円くらい。

2016/01/10

字典類の紹介3《陶文字典》

王恩田 編著 (2007/1) 《陶文字典》 齊魯書社
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一般的な字書って感じの厚さだと思う。



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 本書は戦国・秦代の陶文(陶磁器・土器の銘文)を字毎に配列したものである。各字形は拓本をそのまま切り貼りしたものであり(ゴミ取りはしていない)、出典は全て王恩田《陶文圖録》である。よって模写である《古陶文字徴》より正確な字形を見ることができる。
 各字形には出典の番号が付してある。また一部の字形にはわりと丁寧に解説がついている。
 配列は説文順、卷一~卷十四のあとに合文・附録(隷定不可字)がある。また巻末に筆画索引がある。附録が字典の半分くらいを占めているが配列順が全くわからず例によって検索不可能である。
 《陶文字典》はその10年以上前に出版された《古陶字彙》のアップデート版として出版されたもの(内容だけでなく本文のデザインが酷似している)だが、《古陶字彙》に比べると字例が少ない印象をうけるので、《古陶字彙》と共に使うのが良いかもしれない。ちなみに《陶文字典》ももう九年前なので旧釈が目立つ。

2016/01/08

字典類の紹介2《新金文編》

董蓮池 編著 (2011/10) 《新金文編》 作家出版社

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でかいし重い
箱のサイズがきついので中卷の箱が壊れた



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 配列は説文順、亥部の後に合文・附録一(図象)・附録二(隷定不可字)がある。同一字種内は字体別に分けられ、同一字体内は時代順、同一時代内は出典番号順に並んでいる。例によって附録部分は検索不可能、配列順もよくわからないので不便。また例えば「犬」字は正編P1403に掲載されているが、それとは別に附録一P124にも存在するというわかりにくさもある。巻末に筆画索引と拼音索引がある(が上述したように例えば「犬」を引いても附録一P124には辿りつけない)。
 各字形は拓本を切り貼りしただけである(《新甲骨文編》や二玄社の各書道字典のような「ゴミ取り」はされていない)。《金文編》のような模写は誤りが生まれるからよくないとか序文に書いてあったと思う。よってなるべく拓本のきれいな字のみを収録している。また特殊な字体のものや学説が一定していないものは収録を避けているようである。ちなみに日本で出ている書道字典の多くは《金文編》の字形を用いているようだ。小學堂金文の字形も《金文編》をトレースしたものである(《新金文編》をトレースしたものも一部ある)。
 各字形には器名・時代・出典が併記してある。一部の字には軽い解説や釈文が載っていたりする。器名が問題で、特に器名に通仮字が含まれる場合に、出典とは異なる名前を掲載しているものが多くあるので注意が必要。
 出版は2011年10月だが実際の編纂作業は2010年秋に終わった模様。5年もたつと旧釈がところどころ目立つ。
 値段は1986元(約35000円)。日本で買うとおそろしい値段になる。

2016/01/07

字典類の紹介1《新甲骨文編(增訂本)》

漢字好きのみなさんの散財に役に立てるように僕の持っている字典類の紹介をしたいと思う。

劉釗、洪颺、張新俊 編纂 (2009/5) 《新甲骨文編》 福建人民出版社
劉釗 主編 (2014/12) 《新甲骨文編(增訂本)》 福建人民出版社

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��一般的な漢和辞典とくらべてでかい・厚い・重いという図)



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��本文はこんな感じだという図)
 字種の配列は説文順、説文にない字(*付きの字)はどれかの部の最後に配列され、亥部の後に合文部と附録部(隷定不可字)がある(中国の古文字編はだいたいこの配列)。同一字種内は字体別に分けられ、同一字体内は類組の時代順、同一組内は出典の番号順(增訂本のみ)に配列されている。附録部の配列は《殷墟甲骨刻辭類纂》に基づいている。
 各字形は拓本をコンピューターで処理した後に白黒反転したものを用いている。よって今までの《甲骨文編》《甲骨文字典》《甲骨文字編》等の模写字形より正確な字形であるといえる(ただし筆画が誤って傷などと判定され消されてしまっている字形も極希にある)。ちなみに日本で出ている書道字典の多くは《甲骨文編》の字形を用いているようだ。小學堂甲骨文の字形も《甲骨文編》をトレースしたものである。
 各字形には出典と類組が併記してあるが、この部分に結構誤植があったりする。
 字例をもう少し多くできなかったのか、というのが気になる所。おそらく分冊にしたくなかったのと編集の手間を考えて、なるべく拓本がきれいな字形のみに絞ったのだろう。ちなみに拓本の出典以外の参考文献が一切書かれていないので釈字に疑問をもっても解決できない。また附録部は索引もなく検索不可能なため目的の字を発見するのが難しい。
※增訂本の旧版との違いは、装丁や紙質の上昇(と共になぜかカバーがなくなった)、栞(赤い紐)の追加、新出土資料及び新研究考釈の取り入れ、各字形の類組の配列順の変更、各字形の同一組内の配列順の変更、部首目録の追加、筆画索引の同一画数内の配列順の変更。
 気になるお値段は旧版が280元(約5000円)、增訂本が330元(約6000円)。これに送料やら手数料やらがついて日本で買うと15000円くらいするみたい。