「某」
釋義
金文
用例が少ないが、全て「謀」の意味に用いられる。諫簋について「無」あるいは「靡」と読み否定の意味とする説もある(郭沫若、楊樹達、裘錫圭)。
- 動:はかる。くわだてる。計画する。=謀
①王伐𬃚(蓋)𥎦(侯),周公某(謀),禽𬒯(祝)。禽簋,《銘圖》04984;周早
②女(汝)某(謀)不又(有)聞(昏),母(毋)敢不譱(善)。諫簋,《銘圖》05336;周中
楚簡
楚簡では人名の用例が多い。また遣策簡には「梅」の用法が見える。- 代:なにがし。それがし。ある人。
①含(今)日某𨟻(將)欲飤(食),某敢㠯(以)亓(其)妻□妻女(汝)。九店《告武夷》43
②句茲某也發陽(揚)。清華壹《祝辭》1
代:なにがし。それがし。ある事。
③初日政勿若某,今政砫(重),弗果。清華柒《越公其事》39 - 名:うめ。=梅
①一垪(瓶)某(梅)𨟻(醬)。信陽《遣策》21
②[⿳宀⿰必必甘](蜜)某(梅)一[⿰缶土](缶)。包山《遣策》255 - 名:姓。=梅
①某[⿳艸二艸]之黄爲右[⿰馬𤰇](服)。曾侯乙《乘馬》143
②某(梅)瘽才(在)漾陵之厽(三)鉩(璽),[⿵門⿰夕刀](間)御之典匱。包山《集箸》13
③某訓。包山《所屬》193 - 名:地名。
①某丘一冢。葛陵甲三367
②[⿰既刂](刏)於𬏄丘、某丘二〼。葛陵甲三403
釋形
「甘/口」と「木」に従う。《説文》六篇上《木部》「某,酸果也。」段注「此是今梅子正字。」とあり、「楳(梅)」の初文。先秦文字では「甘」旁と「口」旁はしばしば区別されない。先秦文字の字形は「呆/杲/𣏼/某」形の4種に分けられるが、漢代以降は「某」形が残った(ただし説文小篆は「杲」形)。漢~南北朝代は縦画が上部まで伸びた形が常用されたが、唐代には「其」の下部を「小」に換えたような字体が一般的となった。《康煕字典》は説文小篆を模倣した字体を掲出する。
「牟」の略体「厶」を借りる用法が特に仏教系の写本には多く見られる。
釋詞
「某」と「母」は同音である(《廣韻》莫厚切)。また「某」声と「母/毎」声は互いに通用し、両字は同源と考えられる。- 《集韻》平聲《灰韻》謀杯切「梅,或作“楳、某、槑”。」(231)
- 《説文》三篇下《言部》「謀,慮難曰謀。𠰔,古文謀。𧦥,亦古文。」(46下)
- 《禮記・中庸》「人道敏政,地道敏樹。」鄭玄注「敏或爲謀。」
張建銘は以下の諸字を同源とし「始まり、兆し」の意味があるとする。
- 腜,《説文》四篇下《肉部》「婦孕始兆也。」(81下)
- 媒,《説文》十二篇下《女部》「謀也。謀合二姓者也。」(259下)
- 謀,《説文》三篇下《言部》「慮難曰謀。」(46下)
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