「負」
釋義
金文
金文の「負」字は戦国晩期の兵器に一例あるのみである。- 「負陽」:地名。
①十二年,負陽命(令)□雩,工帀(師)樂休,冶□。負陽令戈,《銘圖》17199;戰晩
楚簡
楚簡に「負」字は用いられていない。上博三《周易・睽》33「見豕[⿱伓貝](負)𡌆(塗)」、同《周易・解》37「[⿱伓貝](負)𠭯(且)𨍱(乘)。」、今本《周易》が「負」とするところを上博簡は「⿱伓貝」に作る。
秦簡
法律文書では「負う」「償う」の用例が多く見られる。- 動:おう。背負う。背中に物を載せる。
①吏自佐、史以上負從馬、守書私卒,令市取錢焉,皆䙴(遷)。睡虎地《秦律雜抄》11
②一人負米十斗,一人負粟十斗,負食十斗。嶽麓貳《數・衰分類算題》137 - 動:おう。責任、債務をもつ。
①作務及賈而負責(債)者,不得代。睡虎地《秦律十八種・司空》136
②夫妻相反負者,妻若夫必有死者。嶽麓壹《占夢書》9貳 - 動:つぐなう。賠償する。
①其不備,出者負之;其贏者,入之。睡虎地《秦律十八種・倉律》23
②羣它物當負賞(償)而僞出之以彼賞(償)。睡虎地《秦律十八種・效》174 - 名:つま。=婦
①驚多問新負(婦)、妴得毋恙也?睡虎地11號木牘反Ⅵ
②驚多問新負(婦)、妴皆得毋恙也?睡虎地6號木牘正Ⅴ - 名:えびら。矢筒。=箙
①卒百人,戟十、弩五、負三,問得各幾可(何)?嶽麓貳《數・衰分類算題》132
②述(術)曰:同戟、弩、負數,以爲法。嶽麓貳《數・衰分類算題》133
釋形
「人」と「貝」に従う。戦国晩期以前には見られない。「府」の戦国時代に見られる異体字には「𢊾」「⿱付貝」「⿸广負」等があり、「負」は「⿱付貝(府)」から分化した字と思われる(黄德寬)。南北朝~唐代には説文小篆を楷書化したものとして上部を「刀」とした字体が用いられたが、《五經文字》には「負」が採用された。
釋詞
「負」「背」「倍」は音義とも近く通仮例があり、同源である。- 《釋名・釋姿容》「負,背也,置項背也。」
- 《史記・酈生陸賈列傳》「項王負約不與。」,《漢書・酈陸朱劉叔孫傳》「項王背約不與。」
- 《釋名・釋形體》「背,倍也,在後稱也。」
- 馬王堆《老子》甲本《道篇》126「民利百負。」、同乙本233下「民利百倍。」
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