「采」
釋義
甲骨文
特定の時間帯を表す「大采」「小采」の語に用いられる。一期甲骨文にしか見られず、以降は「朝」「莫(暮)」など別の用語に取って代えられたようである。- 「大采」「大采日」:時間詞。朝方。
①癸亥卜,貞:旬。一月。昃雨自東。九日辛未大采各云(雲)自北。《合集》21021;𠂤小
②丙午卜:今日其雨。大采雨,自北延[⿰戌大],少雨。《合集》20960;𠂤小
③乙卯卜,㱿,貞:今日王往于𦎫〼之日大采雨,王不[步]〼《合集》12814正;典賓
④乙卯卜,㱿,貞:今日王往于〼之日大采雨,王不〼《合補》3643正;典賓 - 「小采」「小采日」:時間詞。日暮れ頃。
①癸巳卜,王:旬。四日丙申昃雨自東,小采既。《合集》20966;𠂤小
②丁未卜:翌日雨。小采雨,東。《合集》21013;𠂤小
③今日小采允大雨。《合集》20397;𠂤小
④癸亥卜,貞:旬。乙丑夕雨。丁卯夕雨。戊小采日雨,風。己明啟。《合集》21016;𠂤小
金文
西周における「采」は周王から貴族に与えられた土地を指す。他の賜与地と異なるのは、采主は租税を徴収したり服役を課したりすることができたものの土地の管理運営には携わらず、采の統治権はなお王室の下にあることである。- 名:采地。 王から貴族に与えられた土地。
①今兄(貺)畀女(汝)䙐土,乍(作)乃采。中鼎,《銘圖》02382;周早
②王才(在)𢇛,易(賜)[⿺走𠳋](遣)采。遣卣,《銘圖》13311;周早
③[⿸户貝](胥)朕采[⿸疒㚔]田、外臣僕。聞尊,《銘圖》11810;周早
楚簡
{彩}{綵}の意味に用いられる。郭店《性自命出》「采」を上博一《性情論》は「㥒」に作る。- 動: みだれる。=㥒
①不又(有)夫柬﹦(簡簡)之心則采。郭店《性自命出》45 - 「采(綵)勿(物)」:彩色を施した旌旗・衣服など。その彩色によって貴賤を区別した。
①𪴨﹦(業業)天[⿱陀土](地),焚﹦(紛紛)而多采(綵)勿(物)。上博三《恒先》8
②恙(祥)宜(義)、利丂(巧)、采(綵)勿(物),出於[⿱乍又](作)。上博三《恒先》7
釋形
「爪」(手の象形)と、「木」または「枼(あるいは“㕖”[1])」からなり、手で葉(あるいは実)を摘み取るさまの象形で、「採」の初文。甲骨文の二種の字体のうち、ただの「木」に従う字体が後代に引き継がれた。釋詞
「采」声字は「取る」「彩る」義を共有する。参考・関連文献
文中出典
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文字編
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