「𦣞」
釋義
金文
用例は少なく、固有名詞にしか用いられていない。- 名:人名。族名。
①𦣞。𦣞觚,《銘圖》09037;商晩
②鑄子弔(叔)黑𦣞肈乍(作)寶盨。鑄子叔黑𦣞盨,《銘圖》05607-05608;春早 - 名:姓。=姬
①魯白(伯)愈父乍(作)鼄(邾)𦣞(姬)仁𦨶(媵)𬐿(沬)盤。魯伯愈父盤,《銘圖》14448;周晩
②黄子乍(作)黄甫(夫)人孟𦣞(姬)器則。黄子鬲,《銘圖》02844;春早
楚簡
用例は「頤」が《周易》に用いられているのみ。- 名:卦の一つ。
①䷚頤:貞吉。觀頤,自求口實。上博三《周易・頤》24
秦簡
用例は「頤」が《日書・黄鐘》に用いられているのみ。- 名:あご。おとがい。下あご。
①兑(鋭)顔,兑(鋭)頤,赤黑,免(俛)僂,善病心、腸。放馬灘《日書》乙種《黄鐘》206
釋形
郭沫若は「頤」の初文で顎の象形、于省吾は「䇫」の初文で梳き櫛の象形、白川静は乳房の象形としている中で、于省吾の説がほぼ定説となっている(近年、蔣玉斌《甲骨文待登録字“𦣞”“巸”釋説》が発表されたが未見、下顎と歯の象形としているようである)。殷墟甲骨文に「𦣞」の用例はないが、これを偏旁として含む「姬」字が見られる。後代の出土文字資料も同様に「𦣞」の用例は少ない一方で「姬」は多く見られる。
《説文》では「頤」が「𦣞」の異体字とされているため、習慣的に「𦣞」「頤」を同一字種として扱うことがある。「頤」は隷書楷書ではさまざまな字形が見られる。「顊」は《康煕字典》では「頤」とは別字種として扱われている。
釋詞
「巸」声字と「喜」声字は音義とも近く、同源と考えられる。- 《説文》五篇上《喜部》「喜,樂也。」(96下)
- 《方言》卷十「紛怡,喜也。湘潭之間曰紛怡,或曰巸巳。」
- 《尚書・堯典》「庶績咸熙。」、《文選・劇秦美新》「庶績咸喜。」
- 《説文》十二篇下《女部》「媐,說樂也。」(262下)
- 《玉篇》卷二十一《火部》「熹,熱也,烝也,炙也,熾也。亦作“熈、暿”。」(390)
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