「迺(廼)」
釋義
甲骨文
前後をつなぐ副詞として用いられる。- 副:すなわち。そして。そこで。=乃
①庚辰卜,王:祝父辛羊豕,迺𫹉父〼《合集》19921;𠂤小
②于壬王迺田,亡𢦔(災)。《合集》28609;無一 - 名:地名。
①〼步于迺。《合集》8270;賓一
②王㞷(往)于迺。《合集》33159;歷一
金文
前後を接続する副詞(あるいは接続詞)として用いられる。前後の句同士は因果関係や、単純な時間の前後、仮定と結果など多岐にわたる。- 副:すなわち。そして。そこで。
接:すなわち。そして。そこで。
①才(在)𦮘(艿),白(伯)懋父廼罰得、𫷢、古三百寽(鋝)。師旂鼎,《銘圖》02462;周中
②正廼𡀚(訊)厲曰:“女(汝)賈田不(否)?”厲廼許,曰:“余審賈田五田。”五祀衛鼎,《銘圖》02497;周中
③用夨[⿰戈業](業)散邑,廼即散用田。散氏盤,《銘圖》14542;周晩
楚簡
接続用法のほか固有名詞としても用いられている。- 副:すなわち。そして。また。さらに。=乃
①又(有)孚不終,乃𤔔廼(乃)啐(萃)。上博一《周易・革》29
②改(巳)日廼(乃)孚,元羕(享)貞,利貞,𠰔(悔)亡。上博一《周易・革》47 - 副:すなわち。そして。そこで。続いて。=乃
①廼[⿱少子]〓(小子)發取周廷杍(梓)梪(樹)于氒(厥)𨳿(間)。清華壹《程寤》1
②廼方(旁)救(求)巽(選)睪(擇)元武聖夫,𦟤(羞)于王所。清華壹《皇門》3
③王廼[⿰亻𧧈] (訊)敚(説)曰:“帝殹(繄)爾以畀[⿱余口](余),殹(抑)非?”清華叁《説命上》3
④才(在)[⿹暊又](夏)之𣂟(哲)王,嚴[⿰礻寅]畏皇天上帝之命。清華伍《厚父》3 - 「又廼」:古国名。=有娀
①禼(契)之母,又(有)廼(娀)是(氏)之女也。上博二《子羔》10
釋形
甲骨文は「西」あるいは「鹵」と凵形あるいは「口」に従い、多くの字体が見られる。「西」は声符である可能性が高いが、「西」が「鹵」に変化したのか、「鹵」が「西」に変形音化したのかは不明。仮借の用法しかなく、造字本義は定かではない。上部は塩粒で下部は皿(高鴻縉)、上部は容器で下部は敷物(朱方圃)、といった説が代表的ではあるがいずれも根拠に乏しい。周晩期に「卣」と同化して上部に横画が追加された。下部の凵形の部品は戦国時代には𠃊形となり、後漢代に草書の「辶」と同形化し、楷書で「辶」あるいは「廴」に変化した。
説文古文の「𠨅」は先秦に用例がなく、誤りと思われる。
釋詞
上述のように、接続用法は仮借と思われ、本義は不明である。参考・関連文献
工具書
徐中舒主编《甲骨文字典》第501頁,四川辞书出版社1989年。劉興隆《新編甲骨文字典》第273頁,國际文化出版1993年。
于省吾主編《甲骨文字詁林》第1037頁,中華書局1996年。
崔恒升《简明甲骨文词典》(增订本)第335頁,安徽教育出版社2001年。
马如森《殷墟甲骨文实用字典》第114頁,上海大学出版社2008年。
趙誠《甲骨文簡明詞典――卜辭分類讀本》第293頁,中華書局2009年第2版。
落合淳思《甲骨文辞典》第445頁,朋友書店2016年。
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張世超等《金文形義通解》第1121頁,中文出版社1996年。
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文字編
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佐野光一編《木簡字典》第710頁,雄山閣出版1985年。
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論文
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