2017/06/28

字典「迺(廼)」

「迺(廼)」

釋義

甲骨文

前後をつなぐ副詞として用いられる。
  1. 副:すなわち。そして。そこで。=乃
    庚辰卜,王:祝父辛羊豕,𫹉父〼
    《合集》19921;𠂤小

    于壬王田,亡𢦔(災)。
    《合集》28609;無一
  2. 名:地名。
    〼步于
    《合集》8270;賓一

    王㞷(往)于
    《合集》33159;歷一

金文

前後を接続する副詞(あるいは接続詞)として用いられる。前後の句同士は因果関係や、単純な時間の前後、仮定と結果など多岐にわたる。
  1. 副:すなわち。そして。そこで。
    接:すなわち。そして。そこで。
    才(在)𦮘(艿),白(伯)懋父罰得、𫷢、古三百寽(鋝)。
    師旂鼎,《銘圖》02462;周中

    正廼𡀚(訊)厲曰:“女(汝)賈田不(否)?”厲許,曰:“余審賈田五田。”
    五祀衛鼎,《銘圖》02497;周中

    用夨[⿰戈業](業)散邑,即散用田。
    散氏盤,《銘圖》14542;周晩

楚簡

接続用法のほか固有名詞としても用いられている。
  1. 副:すなわち。そして。また。さらに。=乃
    又(有)孚不終,乃𤔔(乃)啐(萃)。
    上博一《周易・革》29

    改(巳)日(乃)孚,元羕(享)貞,利貞,𠰔(悔)亡。
    上博一《周易・革》47
  2. 副:すなわち。そして。そこで。続いて。=乃
    [⿱少子]〓(小子)發取周廷杍(梓)梪(樹)于氒(厥)𨳿(間)。
    清華壹《程寤》1

    方(旁)救(求)巽(選)睪(擇)元武聖夫,𦟤(羞)于王所。
    清華壹《皇門》3

    [⿰亻𧧈] (訊)敚(説)曰:“帝殹(繄)爾以畀[⿱余口](余),殹(抑)非?”
    清華叁《説命上》3

    才(在)[⿹暊又](夏)之𣂟(哲)王,嚴[⿰礻寅]畏皇天上帝之命。
    清華伍《厚父》3
  3. 「又廼」:古国名。=有娀
    禼(契)之母,又(有)廼(娀)是(氏)之女也。
    上博二《子羔》10

釋形

甲骨文は「西」あるいは「鹵」と凵形あるいは「口」に従い、多くの字体が見られる。「西」は声符である可能性が高いが、「西」が「鹵」に変化したのか、「鹵」が「西」に変形音化したのかは不明。仮借の用法しかなく、造字本義は定かではない。上部は塩粒で下部は皿(高鴻縉)、上部は容器で下部は敷物(朱方圃)、といった説が代表的ではあるがいずれも根拠に乏しい。
周晩期に「卣」と同化して上部に横画が追加された。下部の凵形の部品は戦国時代には𠃊形となり、後漢代に草書の「辶」と同形化し、楷書で「辶」あるいは「廴」に変化した。
説文古文の「𠨅」は先秦に用例がなく、誤りと思われる。

釋詞

上述のように、接続用法は仮借と思われ、本義は不明である。



参考・関連文献

工具書

徐中舒主编《甲骨文字典》第501頁,四川辞书出版社1989年。
劉興隆《新編甲骨文字典》第273頁,國际文化出版1993年。
于省吾主編《甲骨文字詁林》第1037頁,中華書局1996年。
崔恒升《简明甲骨文词典》(增订本)第335頁,安徽教育出版社2001年。
马如森《殷墟甲骨文实用字典》第114頁,上海大学出版社2008年。
趙誠《甲骨文簡明詞典――卜辭分類讀本》第293頁,中華書局2009年第2版。
落合淳思《甲骨文辞典》第445頁,朋友書店2016年。
方述鑫等《甲骨金文字典》第350頁,巴蜀书社1993年。
張世超等《金文形義通解》第1121頁,中文出版社1996年。
徐在國《上博楚簡文字聲系(一~八)》第373頁,安徽大學出版社2013年。
何琳儀《戰國古文字典――戰國文字聲系》第78頁,中華書局1998年。
黄德宽主编《古文字谱系疏证》第184頁,商务印书馆2007年。
李学勤主编《字源》第417頁,天津古籍出版社2012年。
劉志基主編《中國漢字文物大系》第五卷第172頁,大象出版社2013年。

文字編

李宗焜《甲骨文字編》第384頁,中華書局2012年。
劉釗主編《新甲骨文編》(增訂本)第290頁,福建人民出版社2014年。
董蓮池主編《新金文編》第549頁,作家出版社2011年。
畢秀潔《商代金文全編》第308頁,作家出版社2012年。
方勇《秦簡牘文字編》第136頁,福建人民出版社2012年。
饒宗頤《上博藏戰國楚竹書字匯》第108頁,安徽大學出版社2012年。
李学勤主編《清華大學藏戰國竹簡(壹—叁)文字編》第131頁,中西書局2014年。
佐野光一編《木簡字典》第710頁,雄山閣出版1985年。
梅原清山編《北魏楷書字典》第626頁,二玄社2003年。

論文

武振玉《两周金文词类研究(虚词篇)》第44、213、232頁,吉林大学2006年博士大学论文。
夏大兆《甲骨文字用研究》第523頁,安徽大学2014年博士大学论文。

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