「來」
釋義
甲骨文
「来る」の意味に用いられる。その対象は人だけでなく、敵国の攻撃・天候・災害など多岐にわたる。対象によって「~來」と「來~」の形がある。
「來+時間詞」の形で「次にやってくるその時間」を表す用法がある。「来年」「来週」などと同用法である。殷墟甲骨文では「來+干支」の形が多い。
「來+時間詞」の形で「次にやってくるその時間」を表す用法がある。「来年」「来週」などと同用法である。殷墟甲骨文では「來+干支」の形が多い。
- 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。《花東》481;花二①才(在)𫦎(割)來自斝。《合集》1027正;賓一②己未卜,㱿,貞:缶其來見王。一月。
己未卜,㱿,貞:缶不其來見王。《合集》2763反;典賓③帚井來。《合集》36509;黄一④隹(惟)王來正(征)盂方白(伯)炎。 - 動:もたらす。貢納する。《合集》9200反;賓一①我來卅。《合集》152反;賓一②奠來十。《合集》945正;賓一③貞:古來犬。
古不其來犬。
古來馬。
不其來馬。 - 形:将来の。日時・時間を表す言葉をあとにおいて「次に来る~」を表す。《合集》6478;典賓①貞:來乙亥㞢(侑)于祖乙。《合集》12466正;典賓②貞:來乙酉其雨。
貞:來庚寅其雨。
貞:來庚寅不其雨。《村中南》403.2;無一③于來辛巳𫹉,受禾。 - 名:むぎ。小麦。《合集》914;賓一①辛亥卜,貞:[咸]穫來。
- 名:地名。《合集》20907;𠂤小①己未卜:今日不雨。才(在)來。《合集》19471;賓三②貞:从來至于皿。
金文
西周金文では多くの場合後ろに他の動詞をくっつけて用いられる。直訳すると「来て~する」「~しにくる」或いは「~してくる」となるが、実際は文中においてあまり意味をなさない。- 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。录簋,《銘圖》05115;周中①白(伯)[⿰呇隹](雝)父來自㝬。
動:きて~する。~しにくる。他の動詞をあとに続けて用いる。小臣艅尊,《銘圖》11785;商晩②隹(唯)王來正(征)人(夷)方。厚趠鼎,《銘圖》02352;周早③隹(唯)王來各(格)于西周年。史牆盤,《銘圖》14541;周中④𣁋(微)史剌(烈)且(祖),廼來見武王。五年琱生簋,《銘圖》05340;周晩⑤琱生又(有)事,召來合事。 - 形:将来の。日時・時間を表す言葉をあとにおいて「次に来る~」を表す。
「來歲」:来年。曶鼎,《銘圖》02515;周中①[若]來歲弗賞(償),則付卌秭。 - 名:人名用字。邾來隹鼎,《銘圖》02885;春早①鼄(邾)來隹乍(作)鼎。
- 「來歸」:帰ってくる。不𡢁簋,《銘圖》05387;周晩①余來歸獻禽(擒)。
楚簡
九店楚簡《簿》では「檐」「⿰禾坐」「⿰禾癸」などともに、「⿱崔田」を数える量詞として用いられている。「⿱崔田」は「㽯(畦)」の異体字と考えられている。
卜筮簡では前辞に「來歲」が用いられている。
なお、楚簡では主に「⿱來止」「逨」の字体が用いられる。上博三《周易》では「⿰木⿱來止」「⿱萊止」も用いられているが、いずれも今本では「來」に作る。
卜筮簡では前辞に「來歲」が用いられている。
なお、楚簡では主に「⿱來止」「逨」の字体が用いられる。上博三《周易》では「⿰木⿱來止」「⿱萊止」も用いられているが、いずれも今本では「來」に作る。
- 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。郭店《語叢四》2①往言[⿰昜刂](傷)人,[⿱來止](來)言[⿰昜刂](傷)𠮯(己)。包山《集箸言》132反②[⿱衰刖]尹傑[⿰馬𡉣](馹)從郢以此等(志)[⿱來止](來)。上博三《周易・比》9③不寍(寧)方逨(來),𨒥(後)夫凶。清華貳《繋年》第五章25④君[⿱來止](來)伐我〓(我,我)𨟻(將)求𫻲(救)於[⿰㣇阝](蔡),君[⿱女一](焉)敗之。
- 名:卦の一つ。「震」の別名。=釐清華肆《筮法・四季吉凶・春》37①[⿱來止](來)巽大吉。清華肆《筮法・四季吉凶・夏》37②[⿱來止](來)巽少(小)吉。清華肆《筮法・四季吉凶・冬》38③[⿱來止](來)巽大凶。
- 名:詩の篇題。《詩經・周頌》に収められている。=賚郭店《性自命出》25①雚(觀)《[⿱來止](賚)》、《武》,則齊女(如)也斯[⿱乍又](作)。郭店《性自命出》28②《[⿱來止](賚)》、《武》樂取,《卲(韶)》、《[⿹暊止](夏)》樂情。上博一《性情論》15③[⿱雚目](觀)《[⿱來止](賚)》、《武》,則[⿱齊心](齊)女(如)也斯[⿱乍又](作)。
- 名:地名用字。
州来国は春秋時代の小国。清華貳《繋年》第五章25①五(伍)雞𨒫(將)吴人以回(圍)州[⿱來止](來)。清華貳《繋年》第十五章82②吴縵(洩)用(庸)以𠂤(師)逆[⿰㣇阝](蔡)卲(昭)侯,居于州[⿱來止](來)。
棘津は黄河の渡しの一つ。郭店《窮達以時》4-5③郘(呂)𡔞(望)爲牂(臧)[⿱來止](棘)𣿕(津),戰(守)監門[⿱來止](棘)地。 - 量:「⿱崔田」に対して用いられる数量単位。九店《簿》1①[⿱崔田]二[⿰禾坐]又五來,敔[⿰禾毋]之五檐(擔)。九店《簿》3②[⿱崔田]五[⿰禾癸]又五來,敔[⿰禾毋]之十檐(擔)一檐(擔)。九店《簿》4③……方七,麇一,[⿱崔田]五[⿰禾癸]又六來,[⿱崔田]四……
- 「來各(格)」:やってくる。清華壹《耆夜》8①不(丕)㬎(顯)逨(來)各(格)[⿱金心](歆)氒(厥)𬪭(禋)明(盟)。清華叁《説命中》2②來各(格)女(汝)敚(説),聖(聽)戒朕言,[⿰氵軫](慎)之于乃心。
- 「來歸」:帰ってくる。九店《日書・告武夷》44①囟(思)某逨(來)䢜(歸)飤(食)故□。
- 「來𫻴(歲)」:来年。天星觀《卜筮祭禱》9-1①從十月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)之十月。葛陵《卜筮祭禱》甲三117、120②[⿱夜示](𬒵)之月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)之[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)。葛陵《卜筮祭禱》乙一19③自[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)之月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)。
釋形
麦の象形で、「麥」の初文。しかし麦を意味する用例は少なく、ほとんどが到来の意味に用いられている。賓組甲骨文では上部の短横画を省略した形を用いる。無名組では中部の画を反転させた形が見られる。黄組には縦画の上部を曲げた形が見られる。戦国楚簡の文字は縦画下部に短横画を加えたものが多い。
戦国時代の燕・晋・楚国では意符として「止」「彳」「辵」を加えた字体が見られる。北魏には「走」を加えた字体も見られる。
後漢以降「來」より「来」の字体が用いられたが、開成石經では「來」の字体が用いられ、そのまま「來」が康熙字典体となっている。
釋詞
{麦}が本義で、{到来}は仮借義とするのが一般的であるが、麦が外来植物であることからの引伸義とする説もある。参考・関連文献
工具書
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崔恒升《简明甲骨文词典》(增订本)第336頁,安徽教育出版社2001年。
马如森《殷墟甲骨文实用字典》第134頁,上海大学出版社2008年。
趙誠《甲骨文簡明詞典――卜辭分類讀本》第268、345頁,中華書局2009年第2版。
落合淳思《甲骨文辞典》第318頁,朋友書店2016年。
方述鑫等《甲骨金文字典》第410頁,巴蜀书社1993年。
張世超等《金文形義通解》第1401頁,中文出版社1996年。
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何琳儀《戰國古文字典――戰國文字聲系》第79頁,中華書局1998年。
黄德宽主编《古文字谱系疏证》第187頁,商务印书馆2007年。
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論文
李樟花《甲骨文运动动词“来、往”研究》,西南大学2014年硕士大学论文。
夏大兆《甲骨文字用研究》第548頁,安徽大学2014年博士大学论文。
沈柏汘《〈北京大學藏西漢竹書・貳〉文字編》第317頁,彰化師範大學2014年碩士大學論文。
夏大兆《甲骨文字用研究》第548頁,安徽大学2014年博士大学论文。
沈柏汘《〈北京大學藏西漢竹書・貳〉文字編》第317頁,彰化師範大學2014年碩士大學論文。
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