「里」
釋義
金文
西周金文では周王朝の治めるある範囲の土地を指し、管理者は「里君」と呼ばれた。- 名:国有の一定範囲の土地。召圜器,《銘圖》19255;周早①休王自㝅事(使)賞畢土方五十里。九年衛鼎,《銘圖》02496;周中①廼(乃)舍(捨)裘衛林𡥨里。大簋蓋,《銘圖》05345;周晩②余既易(錫)大乃里。大簋蓋,《銘圖》05345;周晩③豖㠯(以)𬑪(睽)[⿰舟頁](履)大易(錫)里。
また齊国では「○○里」を地名として用いる。成陽辛城里戈,《銘圖》16929-16930;春晩④成𪤝(陽)辛城里鈛(戈)。平陽高馬里戈,《銘圖》16931;春晩④平𪤝(陽)高馬里鈛(戈)。 - 名:人名あるいは地名用字。今永里倉鼎,《銘圖》01346;戰晩①今永里倉。
- 名:うら。衣服の裏地。=裏伯振鼎,《銘圖》02480;周中①冟(冪)𧙀里(裏)幽。
- 量:長さの単位。一里は三百歩。中山王鼎,《銘圖》02517;戰中①方𬣏(數)百里,[⿰柬刂](列)城𬣏(數)十。
- 「里君」:里の統治・管理者。夨令方彝,《銘圖》13548;周早①眔卿𬀈(事)寮、眔者(諸)尹、眔里君、眔百工、眔者(諸)𥎦(侯)。史頌簋,《銘圖》05259-05267;周晩②[⿰氵⿴囗𬑔](姻)友、里君、百生(姓)。
- 「里人」:「里君」と同義。𬹜簋,《銘圖》05242;周晩①命女(汝)𤔲(司)成周里人眔者(諸)𥎦(侯)、大亞,𡀚(訊)訟罰。
楚簡
包山簡や新蔡葛陵簡では行政区での用法が、郭店簡では「理」としての用法が多く見られる。
- 名:行政区域の単位。「○○里」で地名を表す用法もある。包山《疋獄》92①𨛡(宛)[⿱蔯土](陳)午之里人藍訟登(鄧)[⿱命貝](令)尹之里人苛[⿰畀⿱黽甘]。上博六《天子建州》甲1②夫〓(大夫)建之㠯(以)里。上博六《天子建州》乙1③夫〓(大夫)建之㠯(以)里。
- 名:ことわり。道理。=理郭店《成之聞之》31①天[⿱夂止](降)大[⿱尚示](常),以里(理)人侖(倫)。
- 名:姓。里克は晋の将軍。清華貳《繫年》第六章32①亓(其)夫〓(大夫)里之克乃殺奚𬁼(齊),而立亓(其)弟悼子,里之克或(又)殺悼子。
- 動:おさめる。理する。整える。ただす。=理郭店《性自命出》17①里(理)亓(其)青(情)而出内(入)之。上博一《性情論》10②里(理)亓(其)情而出内(入)之。郭店《語叢一》32③善里(理)而句(後)樂生。郭店《語叢一》54④臤(賢)者能里(理)之。
- 量:長さの単位。上博二《容成氏》7①於是虖(乎)方百里之𫲹(中)。上博四《柬大王泊旱》13②方若肰(然)里。上博七《凡物流形》甲15③坐而思之,每(謀)於千里。
- 「里公」:里の統治・管理を行う官吏。包山《受幾》22①䢵(鄖)司馬之州加公李瑞、里公[⿰隓阝](隋)[⿱目又](得)受[⿱几日](幾)。包山《所屬》162②[⿰亙阝](期)思公之州里公[⿸虍㕣](虐)。包山《集箸言》122③里公邞眚(省)、士尹紬[⿱𠦉診](慎)[⿱反止](返)孑。
釋形
「田」と「土」に従う。人の住む場所を表す。その字形は先秦からほとんど変わっていない。釋詞
「里」声字は「内側」「内にしまう」「隠す」義を共有する。- 裏,《説文》八篇上《衣部》「衣内也。」(168上)
- 貍,《説文》九篇下《豸部》「伏獸。」(196上)
- 埋、薶,《廣韻》平聲《皆韻》莫皆切「瘞也,藏也。」(95)
また水底に生息する魚を「鯉」と称する。人をより集めたのが「里」である。
「里」の居住の義から「理」のおさめるの義が派生した。
裏の縫い目・里の道・鯉の鱗紋などから「みち」が原義であるとする説もある。
参考・関連文献
工具書
方述鑫等《甲骨金文字典》第1058頁,巴蜀书社1993年。
張世超等《金文形義通解》第3189頁,中文出版社1996年。
徐在國《上博楚簡文字聲系(一~八)》第380頁,安徽大學出版社2013年。
何琳儀《戰國古文字典――戰國文字聲系》第83頁,中華書局1998年。
黄德宽主编《古文字谱系疏证》第196頁,商务印书馆2007年。
李学勤主编《字源》第417頁,天津古籍出版社2012年。
劉志基主編《中國漢字文物大系》第十三卷第502頁,大象出版社2013年。
文字編
董蓮池主編《新金文編》第1884頁,作家出版社2011年。
方勇《秦簡牘文字編》第383頁,福建人民出版社2012年。
湯志彪《三晋文字編》第1833頁,作家出版社2013年。
張振謙《齊魯文字編》第1667頁,学苑出版社2014年。
高明、涂白奎《古陶字録》第219頁,上海古籍出版社2014年。
饒宗頤《上博藏戰國楚竹書字匯》第737頁,安徽大學出版社2012年。
李学勤主編《清華大學藏戰國竹簡(壹—叁)文字編》第328頁,中西書局2014年。
佐野光一編《木簡字典》第710頁,雄山閣出版1985年。
梅原清山編《北魏楷書字典》第626頁,二玄社2003年。
董蓮池主編《新金文編》第1884頁,作家出版社2011年。
方勇《秦簡牘文字編》第383頁,福建人民出版社2012年。
湯志彪《三晋文字編》第1833頁,作家出版社2013年。張振謙《齊魯文字編》第1667頁,学苑出版社2014年。
高明、涂白奎《古陶字録》第219頁,上海古籍出版社2014年。
饒宗頤《上博藏戰國楚竹書字匯》第737頁,安徽大學出版社2012年。
李学勤主編《清華大學藏戰國竹簡(壹—叁)文字編》第328頁,中西書局2014年。
佐野光一編《木簡字典》第710頁,雄山閣出版1985年。
梅原清山編《北魏楷書字典》第626頁,二玄社2003年。
0 件のコメント:
コメントを投稿